[フェイス21世紀]:髙木陽

2015年06月07日 09:00 カテゴリ:コラム

 

“冷静な情熱”内に秘め

 

 

緻密に書き込まれたモノトーンと強い印象を残す赤。今年、上野の森美術館大賞展で見事「上野の森美術館絵画大賞」を受賞した髙木陽は独学の画家として歩んできた。

 

《赤い柵に囲まれた大地球儀》油彩 162×162㎝

《赤い柵に囲まれた大地球儀》油彩 162×162㎝

高校時代に美術家を目指し美大受験するも失敗。だが「浪人はピンとこなかった」。その後はアルバイトや自衛官など様々な職に就きながら独りで黙々と絵を描き続ける日々。転機となったのはある美術雑誌で見かけた公募展の広告。「唯一知っている公募展だった」二科展に2005年初出品、07年には初入選を果たす。大きな変化が訪れたのは09年のこと。ある風景画を二科会の東京支部展に出品するも酷評を受けた。「(カラーをやめて)モノクロにすればとアドバイスされ、素直に受け止めました。アートシーンに通用する絵が何なのか全く分かっていなかった」。そして「教わったことを使い切ってみよう」と作風を一気に転換。現在見られるような、モノトーンに好みだという赤を入れ、暗く重い絵画へと変化した。

 

モチーフはインターネットのフリー素材や図鑑から触発されたものが多いが、近年は社会的な事件などからの影響も強いと話す。「世の中がちょっとおかしくなっていると思います。そういうものが自然と絵に現れる。今後は東京裁判や原爆ドームなども描くかもしれません。忘れない方がいいものを残していきたい」。昔は好きなものだけを描いていた。今は描く対象に関し特に好き嫌いない冷めたスタンス。画家としていいバランスでは、と自己分析する。「入選や受賞ごとに絵が上手くなってきた。人に期待されるのは嬉しいことなので、がっかりさせないように頑張っていきたい」。そう語る冷静さの中に確かな情熱を垣間見た。

(取材・撮影/橋爪勇介)

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 髙木陽(Yo Takagi)

1981年埼玉県生まれ。97年埼玉県立蕨高等学校外国語科入学。美術部顧問の田口輝彦(当時の美術教諭で現在は造形作家)に油彩による具象絵画を教わる。2001年第14回日本の自然を描く展入選。その後07年第92回二科展初入選。13年第98回二科展新人奨励賞、14年第99回二科展で上野の森美術館奨励賞と受賞を重ねる。15年第33回上野の森美術館大賞展で上野の森美術館絵画大賞。現在二科会会友。

 

【関連リンク】髙木陽オフィシャルサイト

 

 


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