[フェイス21世紀]:西岡悠妃

2015年10月22日 14:43 カテゴリ:コラム

 

描くのは「音」

 

今年に入り日本画のグループ展「無窮の会」に新人招待作家として参加、「有芽の会」では日本更生保護協会理事長賞を受賞するなど、着実にキャリアを重ねる西岡悠妃は「音を描く日本画家」だ。

 

「空蝉」有芽の会 日本更生保護協会理事長賞 90.9×72.7㎝

「空蝉」有芽の会 日本更生保護協会理事長賞 90.9×72.7㎝

美術の道を志したのは小学生の頃と、そのスタートは早い。研究者の母親とともに日本各地を飛び回り、そこで絵を描くことが自分にとっての日常だった。その頃に「絵が好きだ」と確信し、中学受験で女子美術大学の付属校に入学。当時から佐藤太清賞に出品するなど積極的な子どもで「コンクールに出すことで勉強してきた」と語る。

 

「院展を目指してみたい」という理由から東京藝術大学へと入学し、日本美術院同人の梅原幸雄に師事。現在は助手として学生の指導補佐にも当たっている。そんな西岡が主題とするのは「音」だ。「取材旅行やスケッチをしている時も常に音を気にしています。記憶に残るのはその土地の音。それを絵に残したい」。そう語る新進の画家の作品には女性が中心として描かれることが多いが、「人物を“記号”として描いている」からか、不思議とそこに生々しさは感じられない。

 

静謐さを体現するような人物だが「描く際は肌を目立たせたくて、まず人物を定め、それから背景へと移る」というほど人物のマチエールには強いこだわりを持つ。乳白色の肌は艶かしく、またそれとともに描きこまれた眼は強い存在感を放ち、見るものを捕らえて離さない。今は大きな柱となっている人物画だが、今後は「それに頼らない作品で音を表現したい」と新たな境地への意欲も覗かせた。現状に甘んじることはない。音を描く旅はまだまだ続く。

(取材・撮影:橋爪勇介)

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「有芽の会」表彰式にて撮影

「有芽の会」表彰式にて撮影

西岡 悠妃(Nishioka Yuuhi)

 

1986年東京都千代田区生まれ。2005年私立女子美術大学付属高等学校卒業後、東京藝術大学へ進学。14年同大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画を修了し、修了制作が帝京大学買上げとなる。13年前田青邨記念大賞展の入選を契機に同年第13回佐藤太清賞公募美術展で佐藤太清賞を受賞。また昨年の第69回春の院展および再興第99回院展では念願の初入選を果たした。また再興第100回院展では「記憶の部屋」で奨励賞を受賞。現在東京藝術大学美術学部日本画教育研究助手、日本美術院研究会員。

 

 


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