[画材考] 洋画家 小尾 修

2015年11月30日 10:00 カテゴリ:コラム

 

濃密な絵肌を作る“白”

 

 

シルバーホワイトは油彩の長い歴史の中で最も古くから使われてきた白。古典絵画にみられる、堅牢で濃密な絵肌はこの白の使用による部分が大きい。

 

5年前、レンブラントの模写をするためにシルバーホワイトの顔料を実際に手練りしながらその絵肌の再現を試みたことがあるが、しかし工房の弟子たちを持つわけでもない現代の作家として実際に制作していくうえで、手練り絵の具の使用はあまりにも非効率的。現代の優秀な技術によって作られた市販の絵の具をいかに自分の使いやすい状態にアレンジするかを考えた方がよい。

 

「午後」

ミノーのシルバーホワイトは他社のものに比較して極めて“癖の強い“白だ。非常に粘りが強く、使い慣れない人にとっては硬くて粘っこくて扱いにくい絵の具と感じるかも知れない。しかしこの”粘り“こそがシルバーホワイトならではのものであり、レンブラントやルーベンスの作品の明部にみられるような美しいマチエールを産むのにこれほど適したものはない。私はさらに粘調度と硬さ調整のために適宜スタンドオイルを加えて練り直してから使う。

 

残念なことに油絵の本場であるヨーロッパでは現在ほとんどシルバーホワイトは生産されていない。現在一般に生産されているのは、ほぼ日本だけなのではないかと思う。この最も古く、最も魅力的な「白」が今後も失われないことを願うばかりだ。…でも万が一、日本でも生産停止になっちゃったら…その前に一生分、買い占めちゃおうかな???

 

 

 

小尾 修 (おび・おさむ)

 

1965年神奈川県生まれ。1990年武蔵野美術大学大学院修了。主な受賞は1991年「セントラル美術館油絵大賞展」大賞受賞。2004年「第6回前田寛冶大賞展」準大賞受賞。2006年「第82回白日会展」内閣総理大臣賞受賞。

 

 

今後は、「第19回 ヴワール展」(12月3日~12日、春風洞画廊)に出品。

 

 

【関連リンク】小尾 修 公式HP

 


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