[通信アジア]文化とアートの国際展開の年へ:青木保

2016年02月01日 16:22 カテゴリ:コラム

 

新年2月は、国立新美術館の活動にとって重要な意味を持つ。2月14日にミャンマーの大都市ヤンゴンの国立博物館で「ニッポンのマンガ、アニメ、ゲーム」展覧会が開会する。この展覧会は国立新美術館の自主企画展であるが、ミャンマーに始まる海外巡回をこれから数年かけて行っていく。何分にも日本の美術館が自主企画した展覧会を国際巡回、それもアジア、ヨーロッパ、アメリカなど広範囲にわたる地域で何年もかけて行うなど全く初めてのことなので専門人員から経費からすべての面で弱体組織で苦戦を強いられているが、何とか成功させたい。ミャンマーの後、この巡回展はタイ、香港、ボンなどヨーロッパやアメリカへも回る予定である。

 

国際博物館・美術館会議ICOMの総会が2019年京都開催に内定したことはこの欄でもすでにお知らせしたが、実際に正式決定を見るのは今年7月にミラノで行われる総会においてである。昨年11月にはICOM会長が来日され京都を視察されたが、大変満足された模様である。私は東京でお会いしたが、日本開催を喜んでみえた。

 

2019年9月とはいっても、決して時間的に余裕があるわけではない。これまでパリのICOM本部と連絡を取り分厚い申請書類の作成など一切の事務手続きを行ってきたのは東京にある日本博物館協会事務局なので、ここが窓口となって進んでゆかなくてはならないのだが、開催場所は京都であり、京都での具体的な作業に関してはやはり京都に実行の事務局を設置しなくてはならない。また全体を統括する組織委員会も作らなければならない。そうして準備を整えてミラノ総会に臨まねばならない。皆様のご協力を多くの面で仰がなくてはならない。よろしくお願いします。

 

前回に触れた韓国国立現代美術館における「隣の部屋 アーティスト・ファイル2015―日本と韓国の作家たち」展覧会は、昨年11月9日の開会式・内覧会を無事に終え、現在開催中である(2月14日まで)。

 

国立新美術館と韓国国立現代美術館との共同制作になるこの展覧会は、両国を代表するアーティストたちによる意欲的な作品が並ぶ画期的な展覧会となったが、ソウル郊外にある壮麗な、というかすばらしいお城のように大きな美術館(これが現代美術館なのだから、何と言ったらいいのか、本当に)で国立新美術館との展覧会と同じ作品群がまた異なる空間を得て輝くように感じられた。

 

日・韓両国のアーティストたちもすっかり仲良くなり、両館のキュレイターたちも2年余の共同作業の中ですっかり打ち解けて、これはこれからの両国・両美術館の将来、また日本と韓国の相互理解と友好関係の深まりのためにも実に得難い経験であるとの認識を持って帰ってきた。これからさらに発展させたいものである。

 

なお、昨年秋のソウルにおける日・中・韓の首脳会談の晩餐会は、韓国国立現代美術館のソウル市内の分館で行われた。これは実に粋でしかも国際的そして文化感にあふれた韓国政府の計らいであったと強く感じる。欧米では美術館などでのパーティーや食事会は最高のもてなしであるとの認識がある。日本の「おもてなし」にもこうした計らいがほしいものである。

(国立新美術館館長)

『新美術新聞』2016年1月21日号(第1397号)より転載 

 

ミャンマー国立博物館での筆者

 

 


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