[フェイス21世紀]:松岡 圭介〈彫刻家〉

2016年02月08日 10:00 カテゴリ:コラム

 

人間とは何か 彫刻とは何か―

 

 

東北芸術工科大学の大学院に進み、木彫が制作の軸となった。「人間とは何か」というテーマが確立したのも同じ頃だ。とはいえ、松岡の作品はいわゆるアカデミックな人物像ではない。「もっと自然や動物などに近いイメージ」を通じて、理性の芽生え、知性の発達とともにヒトという種が失った超常的な力、潜在的な生命力を彫刻で表そうとしてきた。

 

秘められた人の獣性が肉体を超えて現れ出たかのような「a potential form」で、2005年に「第4回 あさご芸術の森大賞展」大賞を受賞。この頃に見られるフォルムへの志向は、次第に作品を構成する素材の探究へと移っていき、代表作「a tree man」をはじめとする磁石と砂鉄の“皮膚”を持つ作品群へとつながっていく。

 

文化庁の支援を受けて、ロサンゼルスを拠点とする彫刻家・大平實のもとで制作を行ったのも、素材への探求をより深めるためだった。身近な素材を自らの感覚によって作品として再構成し、日本でも高い評価を受ける大平のもとで彫刻に没頭した1年間。制作への自由な姿勢とともに、「常にハングリーで前しか向いてない」その人間性に大きな刺激を受けた。

 

 

帰国から1年を経た今は、素材からフォルムの探究へと回帰している過渡期だという。フォルムから素材へ、素材からフォルムへ。その繰り返しのなかで、理想とする「素材と技法とかたちが、一番芯の部分の一つのピースにまで響き合う」作品を追求していくのだ。

 

「彫刻は人生の暇つぶし」と大平は以前に語ったそうだ。型にはまらぬ作家らしい型破りな言葉だが、そこには、生涯をかけて彫刻に取り組むという前向きな意志が込められているようにも思える。何よりも続けることが困難と言われるのが彫刻だ。しかし、異国での出会いを通じて「前を向くこと」を知った松岡に、その心配は無用であろう。

 

(取材・撮影:和田圭介)

 

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松岡 圭介 (Keisuke Matsuoka)

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1980年宮城県生まれ。東北芸術工科大学卒業、同大学院修了。現在は仙台を拠点に活動。2005年の「第4回 あさご芸術の森大賞展」大賞をはじめ、各地の彫刻展で受賞を重ねる。2013年から2014年まで文化庁の新進芸術家海外研修制度によりアメリカに滞在。2015年は東京・三鷹のスペース・S(10/10~10/25)、あさご芸術の森美術館(10/31~12/6)で個展、国立新美術館「18th DOMANI 明日展」(12/12~2016.1/24)に出品。2016年2月のリアス・アーク美術館での個展では、作品とともに自身の制作環境を再現し紹介する。東北芸術工科大学非常勤講師。

 

「N.E.blood 21 松岡圭介展」

【会期】2016年2月10日(水)~3月20日(日)

【会場】リアス・アーク美術館(宮城県気仙沼市赤岩牧沢138-5)

【TEL】0226-24-1611

【休館】月曜・火曜、2月12日(金)

【開館】9:30~17:00(最終入館16:30)

【料金】無料

 

【関連リンク】Keisuke Matsuoka Sculpture

 


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