[画材考] 画家 青木恵美子「アクリル絵具を使って」

2017年03月10日 10:00 カテゴリ:コラム

 

 

私は最近アクリル絵具を使って、パレット上で筆跡を固めたものを画面に貼り付けたり、じかに塗ったりした、ややレリーフ状の作品を発表しています。作品のイメージに最も適していたのがアクリル絵具でした。使いやすさと、発色のよさ、厚みの調整など比較的容易に出来るところが魅力です。使いながら顔料を混ぜたり、メディウムの量を調整したりと自分なりに試行錯誤をしているところです。

 

アクリル絵具は厚塗りすると使い方によっては亀裂が入ってしまう時もあります。亀裂が入らないように粘度をいかに保つのかは、私の作品ではとても大切なことです。絵具はかなり沢山の量を使うので、ホルベインの奨学制度を受けていた事で質の良いものを思い切って使う事ができたのは幸いでした。今までずっとアクリル絵具を使ってはきましたが、今の作品を作るまではふつうに水で薄めて描画していたので、同じアクリル絵具といえども使い方でかなり変わるのだという事を改めて感じました。

 

今は3Dプリンターでも絵が描ける時代です。そのような時代だからこそ、私はアナログ手法的な絵画にとても愛着を持っています。今のINFINITYという筆跡の集積作品シリーズもそういう思いから生まれてきた作品でもあります。今後もいろいろな画材にチャレンジして新しい可能性を見出しつつ、堅牢な画面をどう作っていくか、自分なりの表現方法を模索しながら画材と向き会っていきたいと思っています。

 

 

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青木 恵美子 (あおき・えみこ)

 

1976年埼玉県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科油画研究領域修了。「FACE 2017 損保ジャパン日本興亜美術賞」(2月25日~3月30日、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)でグランプリ、「VOCA展2017」(3月11日~30日、上野の森美術館)で佳作賞・大原美術館を賞受賞。2010年「青木恵美子展 -静かな始まり-」(ガレリア・グラフィカbis )をはじめ、これまでGallery Forgotten Dreams、東邦アートで個展を開催。グループ展多数。

 

 

【関連リンク】東邦アート:青木恵美子

 


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