僕は元来アマノジャクだ。どれくらいアマノジャクかと言うと、中学1年生の頃、漫画『スラムダンク』が爆発的人気のなかバドミントン部に入部するほどのアマノジャクだ。僕が今、芸術の分野に足を踏み入れてなおその性格は変わらないらしい。その証拠に、僕が表現技法の中心に選んだのは油絵でも木彫でも銅版でもなく、スクリーンプリント(シルクスクリーン)なのである。
その技法を利用した、ウォーホルやラウシェンバーグがアートの最前線に君臨していた時代とは違う。スクリーンプリント専門の工房は減り、紙に刷ることを専用にしたインクの廃番も相次いでいる。しかしそんなことを憂いていてもしようがない。もとより失うものなし。どのような状況においても芸術に踏み込む作品は制作できる。
それに新しく出会った道具達が今までにない発想を与えてくれる。乾いたらカッチカチに固まる油性インク、不思議な匂いの感光乳剤、硬さに段階のあるスキージ(ゴムベラ)。画材や技法は内向きに掘り下げる作業が必要だし、そこからたぐり寄せた新奇発見は他に代えがたい喜びに満ちている。
しかし表現となると話は別だ。作品を制作する状況(場所)や扱う素材、時代や立場によって作家は作品を外向きに押し出していかなければならない。なんて考えると内向きは快楽。外向きは苦痛になってしまう。そんなの耐えられないので、表現と発見を結びつけるんです。作家自身も画材要素の一つですから。
小野耕石 (おの・こうせき)
1979年岡山県生まれ。2006年東京藝術大学修士課程絵画専攻版画科修了。シルクスクリーンで100回ほどインクを刷り重ね、ドット状の「柱」を無数に生み出すことで、版画の概念を覆すような立体的な作品を生み出している。「VOCA展2015」VOCA賞、「PAT in Kyoto 第2回京都版画トリエンナーレ2016」大賞など受賞多数。今後は銀座・養清堂画廊(9月19日~30日)をはじめ、東京パブリッシングハウス(11月6日~30日)、ギャラリーあしやシューレ(12月)で個展を開催予定。高松市美術館の高松コンテンポラリーアート・アニュアルvol.06 / 物語る物質(10月22日~11月26日)にも参加。
【展覧会】小野耕石 個展
【会期】2017年9月19日(火)~30日(土)
【会場】養清堂画廊(東京都中央区銀座5-5-15)
【TEL】03-3571-1312
【休廊】日曜
【開廊】11:00~19:00 ※最終日は17:00まで
【料金】無料
【関連リンク】
小野耕石 Official site
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