[フェイス21世紀]:財田翔悟〈日本画家〉

2018年02月16日 17:33 カテゴリ:コラム

 

狭間にある幸せ

 

ギャラリー広田美術にて(2017年12月18日撮影)

ギャラリー広田美術にて(2017年12月18日撮影)

 

漆黒の画面の中に、ふとした瞬間の表情が浮かび上がる。昨年星野眞吾賞や、国内外の大学94校の推薦作家展「ファインアート・ユニバーシアード U-35展」優秀作品賞を受賞した財田翔悟(たからだ しょうご)は、今高い注目を集める日本画家の一人だ。

 

元々の志望はデザイン科だったが、予備校で講師の漆原夏樹に出会い日本画の道へ。入学した東北芸術工科大学は多彩な経歴の作家が多く、自由に絵柄を追求することができた。在学時よりコンクールへの出品を始め、受賞や入選を重ねる。

 

光沢ある独自の画面は「磨く」ことで生まれる。古典的漆技法を応用し、絵具を載せた綿布を紙やすりや研磨剤で磨く。その上にエアブラシで着色し、フラットで写実的な画面をつくり出す。黒を主に用いる理由は、美しい艶を出しやすいからだ。

 

一貫して描くのは「生活の中で出会う幸せな光景」。恋人や愛猫を主なモチーフとし、交錯する視線や心の機微を描く。背景は無く、瞳に映した像を丁寧に思い返すような作品世界が広がる。「『不思議の国のアリス』などのファンタジーが昔から好きで、そういった物語性を取り入れながら、身近な存在を描きたいと思っています」。だからだろうか、その作品からは単なる幸福感だけでなく、どこかミステリアスな印象も受ける。

 

財田は制作の際、自分を絶対の存在としてではなく「狭間の存在」として認識する。恋人や家族など様々な相手との関わりが自らを構成し、全てが重なった地点に自分がいるのだ、と。だからこそ些細な幸福も捉えることができるのだろう。2月16日~3月3日にはギャラリー広田美術で3回目となる新作展を開催。今回のテーマは「夢と現実の境界」だ。夢と現実。現実と物語。自分と相手。様々な狭間にある幸せに、仄かな光を当てる。

(取材:岩本知弓)

 

「最初から」2017年 116.7×90.9cm ファインアート・ユニバーシアード U-35展 優秀作品賞受賞作

「最初から」2017年 116.7×90.9cm
ファインアート・ユニバーシアード U-35展 優秀作品賞受賞作

 

《夢と現の狭間で》2017年 182×364㎝

《夢と現の狭間で》2017年 182×364㎝

 

 

ギャラリー広田美術「財田翔悟展」会場風景(2018年2月16日撮影) 今回は眠りによって引き起こされる「現実と夢との境界を跨ぐ瞬間」をテーマに、夜や静などのイメージを想起させる新作を出品している

ギャラリー広田美術「財田翔悟展」会場風景(2018年2月16日撮影) 今回は眠りによって引き起こされる「現実と夢との境界を跨ぐ瞬間」をテーマに、夜や静などのイメージを想起させる新作を出品している

 

女性や猫を描いた作品の他に、山形の風景を題材とした作品も並ぶ。大作を含め10数点を出品

女性や猫を描いた作品の他に、山形の風景を題材とした作品も並ぶ。大作を含め10数点を出品

 

愛猫をモチーフとした作品。一枚の中に様々なマチエールが混在しているので、ぜひ間近で味わってほしい

愛猫をモチーフとした作品。一枚の中に様々なマチエールが混在しているので、ぜひ間近で味わってほしい

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財田 翔悟(Takarada Shogo)

1986年神奈川県生まれ。2012年東北芸術工科大学卒業、14年同大学院芸術文化専攻日本画領域修了。17年は「FACE 2017 損保ジャパン日本興亜美術賞」入選にはじまり「第7回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展」星野眞吾賞受賞、「ファインアート・ユニバーシアード U-35展」優秀作品賞受賞など飛躍の年となった。

 

【展覧会】財田翔悟展

【会期】2018年2月16日(金)~3月3日(土)

【会場】ギャラリー広田美術(東京都中央区銀座7-3-15 ぜん屋ビル1階)

【TEL】03-3571-1288

【休廊】日曜

【開廊】11:00~19:00 ※最終日は17:00まで
【料金】無料

 

【関連リンク】財田翔悟ホームページ

 

 


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