狭間にある幸せ
漆黒の画面の中に、ふとした瞬間の表情が浮かび上がる。昨年星野眞吾賞や、国内外の大学94校の推薦作家展「ファインアート・ユニバーシアード U-35展」優秀作品賞を受賞した財田翔悟(たからだ しょうご)は、今高い注目を集める日本画家の一人だ。
元々の志望はデザイン科だったが、予備校で講師の漆原夏樹に出会い日本画の道へ。入学した東北芸術工科大学は多彩な経歴の作家が多く、自由に絵柄を追求することができた。在学時よりコンクールへの出品を始め、受賞や入選を重ねる。
光沢ある独自の画面は「磨く」ことで生まれる。古典的漆技法を応用し、絵具を載せた綿布を紙やすりや研磨剤で磨く。その上にエアブラシで着色し、フラットで写実的な画面をつくり出す。黒を主に用いる理由は、美しい艶を出しやすいからだ。
一貫して描くのは「生活の中で出会う幸せな光景」。恋人や愛猫を主なモチーフとし、交錯する視線や心の機微を描く。背景は無く、瞳に映した像を丁寧に思い返すような作品世界が広がる。「『不思議の国のアリス』などのファンタジーが昔から好きで、そういった物語性を取り入れながら、身近な存在を描きたいと思っています」。だからだろうか、その作品からは単なる幸福感だけでなく、どこかミステリアスな印象も受ける。
財田は制作の際、自分を絶対の存在としてではなく「狭間の存在」として認識する。恋人や家族など様々な相手との関わりが自らを構成し、全てが重なった地点に自分がいるのだ、と。だからこそ些細な幸福も捉えることができるのだろう。2月16日~3月3日にはギャラリー広田美術で3回目となる新作展を開催。今回のテーマは「夢と現実の境界」だ。夢と現実。現実と物語。自分と相手。様々な狭間にある幸せに、仄かな光を当てる。
(取材:岩本知弓)
財田 翔悟(Takarada Shogo)
1986年神奈川県生まれ。2012年東北芸術工科大学卒業、14年同大学院芸術文化専攻日本画領域修了。17年は「FACE 2017 損保ジャパン日本興亜美術賞」入選にはじまり「第7回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞展」星野眞吾賞受賞、「ファインアート・ユニバーシアード U-35展」優秀作品賞受賞など飛躍の年となった。
【展覧会】財田翔悟展
【会期】2018年2月16日(金)~3月3日(土)
【会場】ギャラリー広田美術(東京都中央区銀座7-3-15 ぜん屋ビル1階)
【TEL】03-3571-1288
【休廊】日曜
【開廊】11:00~19:00 ※最終日は17:00まで
【料金】無料
【関連リンク】財田翔悟ホームページ