小さな頃からいわゆる「ペット」と一緒に生活する、観察をすることが好きであった。アルバイトをしてもいいとされた歳からはそのお金で、変わった生態やエサ、飼育用品だのを買い揃え、失敗成功を繰り返してきた。
それは毛の生えたものから生えていないもの、鱗をつけたもの、もしくは足がないもの、そして植物たちを含め沢山のいのちに囲まれて今現在も生活をしている。
動植物のこちらをみる目線の運びや生態の色、かたちは出会った頃とは随分変わっていくものである。
植物が蕾をつけ花を咲かしてくれる時、同時に例えばトカゲが鱗や皮膚を脱ぎ、また一回り身体を成長させた時、蛇が一生懸命時間をかけ皮を脱ぎ切った時。なんて素晴らしい瞬間だろうと思う。あちら側からも達成感と成長を見せつけてくる。
今この文章を書いている間にもトカゲが窓のへりに爪をかけ、日を浴びながらぼーっと外の走る車を目で追いかけている。部屋の中にいる植物は暖かい場所にいるせいか冬が終わっていると勘違いをしてまた青々とした芽をつけている。構われるのが好きなヘビ。そんな日々が私の生活や精神を支えている。健康的に共存している。私は普段、焼きもので動物を作っているが、うちにいる生き物を題材とすることは少ない。ただ彼らの体の動きや表情はどんな生き物にも共通している事は確かで、私はきっと気づかぬうちに動植物から貰うヒントを作品に溶け込ませ制作をしているのだと思う。
北郷 江 (きたごう・こう)
作陶家、東京藝術大学美術学部美術教育研究室非常勤講師
1989年千葉県生まれ。2012年東京藝術大学美術学部工芸科陶芸専攻卒業。15年東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻陶芸研究室修了。主な個展に「北郷江作陶展〜どうぶつのいる街、林のむこう〜」(2017年、日本橋三越本店6階アートスクエア)など。日本橋三越本店、東京・青山の桃林堂画廊などのグループ展に数多く参加。今後、グループ展「つくえの上の楽しい展」(4月17日~22日、桃林堂画廊)、9月には壺中居(東京・日本橋)でのグループ展を予定する。