煉瓦壁の美術館、装いを新たに再出発
10月1日、東京ステーションギャラリーが6年半ぶりに再開する。館は丸の内北口ドーム内に移転し、全体が3フロアに。赤煉瓦壁の内装に、ドーム上層を覗く壮観な廻廊。歴史と最先端で織り成す瀟洒な造りは、丸の内の新名所となる予感をさせる。
「東京駅に来た方が気軽に立ち寄り、アートに親しんでもらえるような美術館にしたい」と話すのは、2011年1月から館長を務める冨田章さん。小さな展示空間ゆえに大型展の開催は難しいが、恵まれた立地をいかし、「あまり知られていない優れた作家や作品を積極的に紹介していきたい」と意気込む。
冨田さんは1958年生まれ。そごう美術館、サントリーミュージアム[天保山]を経て現職へ。企業美術館の学芸員として、バブル崩壊後の苦境も経験した。だが、「財源確保が難しい中でも、美術館はできるかぎり良質な企画展を続けていくことが重要です。その地道な活動が、次世代に文化の遺産を伝えていくことにつながります」と話す。
同館では、従来の方向性を継承し、国内外の近代美術を主軸に展開していく。一方で、最先端の現代アートも視野に。オープニング記念展「始発電車を待ちながら」を飾るのは、東京駅や鉄道をモチーフにした気鋭の現代作家9組の新作だ。88 年の開業以来、煉瓦壁の美術館として広く親しまれてきた。その新たな一歩が、まもなく踏み出される。
※オープニング展は2013年2月24日まで。当面の間、入場は整理券制。問合せは☎03–3212–2485まで。
「新美術新聞」2012年9月11日号(第1290号)1面より
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