[フェイス21世紀]:加藤 美紀 〈画家〉

2019年01月21日 10:00 カテゴリ:コラム

 

内宇宙から生まれ出るもの

 

市のアトリエにて(2018年11月29日撮影)

アトリエにて(2018年11月29日撮影)

 

工房は作家の内宇宙を示すというが、加藤美紀のアトリエも例外ではない。室内には帯留、和ガラス瓶、ブローチ、懐中時計などレトロ感溢れる小物が至る所に飾られているが、中でも大正から昭和初期にかけて作られたアンティーク着物の収集に力を入れている。高校時代、日本文化に興味を持ったことがきっかけで、和服や和装に魅かれるようになり、現在の作品のモチーフとなる着物を纏った女性へとつながっていった。

「永遠」2013 67.3×25.3cm ワトソン紙、ガッシュ

「永遠」2013年 67.3×25.3cm
ワトソン紙、ガッシュ


作品に描かれる着物、女性、動物、建物、土地などは、日本の神話や死生観などと結びつきながらシンボライズされ、ときに現代の社会情勢や環境問題までをも示唆する。いったん制作に入ると、作品世界に完全に感情移入し、我を忘れるほど没頭してしまう。2018年に「柴又FU-TEN アートルーム」の壁画制作を手掛けたときは、毎日20時間の制作を2週間続けるほど打ち込んだ。

 

画家として制作に凄まじいエネルギーを傾ける一方で、フリーのイラストレーターの顔も持つ。クライアントからの仕事は時間の制約や修正依頼などがともない、作品と一定の距離を保つ必要があるが、「画家としてもプラスになる修行」ととらえて着実に仕事をこなしている。現在は画家と名乗っているものの、当分イラストレーターとの二足の草鞋は履き続けるつもりだ。

 

ニューヨークのグループ展や台北での個展を開催するなど、海外で作品を発表する機会も増えてきた。「画家とイラストレーター」、「国内と海外」。二つの世界を行き来しているうちに、加藤の内宇宙は表現者として新たな境地へと至るに違いない。そのときまたアトリエを訪れるのを心待ちにしたい。

(取材:南雅一)

 

「吉祥」2017年 19.6×51.3cm ワトソン紙、ガッシュ

「吉祥」2017年 19.6×51.3cm ワトソン紙、ガッシュ

 

「日ノ本」2016年 53.0×45.5㎝ 木製パネル、ワトソン紙、ガッシュ

「日ノ本」2016年 53.0×45.5㎝ 木製パネル、ワトソン紙、ガッシュ

 

過去に使用した不透明水彩絵具は、あとから作品を修正できるよう保存している。

過去に使用した不透明水彩絵具は、あとから作品を修正できるよう保存している。

 

アトリエは主にネットオークションから入手したレトロな小物で溢れている。

アトリエは蒐集したレトロな小物で溢れている。

 

★アトリエ小物02

 

画家として作品制作に熱中するあまり、昼夜逆転することもしばしば。イラストレーターとしての仕事が、生活のリズムを戻してくれる。

作品制作に熱中するあまり、昼夜逆転することもしばしば。

 

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加藤 美紀 (Miki Kato)

 

1973年埼玉県生まれ。1996年女子美術大学絵画科洋画専攻卒業。ステーショナリー制作会社で3年間勤務後、フリーのイラストレーターとして独立。2012年、美術家・天明屋のプロデュースする TENGAI GALLERY での個展開催を機に、本格的に画家活動を開始。2016年ニューヨークでグループ展「TENGAI 3.0」、2018年台湾・台北で個展「相搏・相縛」開催。2019年1月18日(金)~2月16(土)、2月21日(木)~3月23日(土)まで銀座・ギャラリーMUMONにてグループ展「鸞翔鳳集」に参加予定。

 

【関連リンク】加藤美紀

 


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