[フェイス21世紀]:和田 的 〈陶芸家〉

2019年02月28日 14:00 カテゴリ:コラム

 

陶芸のその先へ

 

国立新美術館「21st DOMANI・明日展」会場にて 2019年2月2日撮影

国立新美術館「21st DOMANI・明日展」会場にて 2019年2月2日撮影

 

直線と曲線が織りなす優美なフォルム、彫り込みから生まれる白と黒の陰影、清楚でマットな白い肌、端正でシンボリックな造形美を見せる和田作品は、神秘的な存在感さえ湛えている。

 

和田の白磁作品は、磁土を原料に、練り、轆轤、数カ月の乾燥を経、彫刻刀で彫りを入れ、鉋、ヤスリをかけ研磨する。最後に窯で焼成を加えて完成に至るが、その全工程をひとりで賄う。陰影がテーマの場合、白黒のコントラストとエッジの切れ、素材そのままを見せたいため釉薬は掛けない。仕上りは、手技による仕事とは思えないほど精緻極まる。原料の性質、各工程での変形や縮小、時間や温度の管理全てを頭に入れここまで到達した。

「白器|牛」2015年 個人蔵Photo by Eiji Ina

「白器|牛」2015年 個人蔵 Photo by Eiji Ina


開催中の「21st DOMANI・明日展」では、8×16mの床に3×8列=24の陳列ケースが均等配置され、2006年から18年までに制作された34点の白磁作品他が展示されている。まるで白磁の森を彷徨うよう。創意と技が冴えわたる渾身の代表作が凛として屹立し、多様性と1点1点の完成度に目を瞠らせられる。20代からの僅か10余年の軌跡からは、充実した日々を過ごしたことが想像できる。

 

和田は07年文化庁新進芸術家海外研修制度でパリに3カ月滞在した。陶芸ではなく、銅版画のアトリエに学んだ。「銅版画を選んだのは、白磁とは真逆の色のある平面世界を学びたかったから」「パリへ行ったのは、ルーヴル、オルセー、ポンピドーと時代を追って観ることで、美術と人との関わりについての変遷を体感したかったため」。専門性に囚われることなく、広い視野から客観的に自身の陶芸観を磨いてきた。その後の彫刻へのアプローチも作陶の下地となっている。

 

不惑を越え、陶芸のその先に見えるあらゆる可能性にチャレンジしていってもらいたい。

(取材:窪田元彦)

 

「ENERGY」2017年 個人蔵

「ENERGY」2017年 個人蔵

 

(左)「太陽」2017年 個人蔵 (右)左:「白磁|記憶」2017年 松森美術館蔵、右:「白器|記憶」2017年 個人蔵

(左)「太陽」2017年 個人蔵
(右)左:「白磁|記憶」2017年 松森美術館蔵、右:「白器|記憶」2017年 個人蔵

 

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和田 的 (Akira Wada)

 

1978年千葉県生まれ。文化学院陶磁科卒業。上瀧勝治に師事。2005年独立、日本工芸会正会員となる。07年文化庁新進芸術家海外研修員として渡仏。主な受賞:11年第6回 パラミタ陶芸大賞展大賞、17年第27回タカシマヤ美術賞、第37回伝統文化ポーラ賞奨励賞、第64回日本伝統工芸展東京都知事賞、第7回菊池ビエンナーレ大賞。現在、「未来を担う美術家たち 21st DOMANI・明日展 文化庁新進芸術家海外研修制度の成果 平成の終わりに」(1月23日~3月3日・国立新美術館)に出品、現在に至る代表作34点を展示中。

 

【関連リンク】和田 的

 


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