[フェイス21世紀]:佐藤 陽也 〈洋画家〉

2019年08月23日 10:00 カテゴリ:コラム

 

〝自由への飛翔〟

 

都内某所にて(2019年7月17日撮影)

都内某所にて(2019年7月17日撮影)

 

「自分が描いているものと全く別次元。なによりも、この人に絶対に会いたいと思った」

 

佐藤陽也が現在の師である洋画家・広田稔の画集を見たときの衝撃を語る。振り返れば佐藤の人生は逃げてばかりだった。

 

サッカーに夢中だった小中高時代、絵を描くことも好きだったが本格的に始める勇気はなかった。2浪して一般大学に入学したものの、学校には殆ど通わず4年時に韓国へ逃避行。結局、日本に戻り卒業後に家業を継いだが3カ月で放り出し、再び何もないまま上京して憧れていた油彩画を我流で描き始める。

『広田稔 画集 ~彼は海まで線をひく~』(求龍堂、2009年発行) 佐藤の人生を変えた広田の画集。作品275点をオールカラーで掲載。

『広田稔 画集 ~彼は海まで線をひく~』(求龍堂、2009年)佐藤の人生を変えた広田の画集。作品275点をオールカラーで掲載。


そんなとき出会ったのが広田の画集だった。少しでも近づきたいという思いから、広田の所属する白日会展へ初出品するもデッサン力がない故に写真をトレースし、「ただただ恥ずかしかった」と語る佐藤。しかし、2012年広田が共同主宰する「アトリエ21」に参加したことでメキメキとデッサン力が向上し、2013年第89回白日会展の損保ジャパン美術財団賞を受賞する。広田に鍛えられたムービングクロッキー。何千枚もの修練を土台に描いた受賞作品は、現在も一貫してテーマとする“空中で様々なポーズをとる人々”の原点となった。

 

《地上の星》2018年193.9×162.1cm 油彩

《地上の星》2018年 193.9×162.1cm 油彩

 

これまでひたすら見よう見まねで師の技術を吸収しようと背中を追いかけてきたが、今年からは講師としての勉強の機会も得る事ができた。作家として作品が売れたら嬉しいし、グループ展での仲間の作品も気になる。かつては劣等感に苛まれすぐに逃げだしていた。救いとなったのは「絵を買ってくれる人は、絵描きの自由を買ってくれてるんだよ」という師の言葉。気づけば人生で初めて逃げていない自分がいた。

 

師の背中に憧れ自信と自由を得て、自身のモチーフのように空中を飛翔しはじめた作家の次なる筆さばきに期待したい。

(取材:南雅一)

 

《ささえ》2014年 90.9×72.7cm 油彩

《ささえ》2014年 90.9×72.7cm 油彩

 

(左)《水彩クロッキー》2019年 51.5×36.5cm 水彩 (右)《水彩クロッキー》2019年 51.5×36.5 cm 水彩

(左)《水彩クロッキー》2019年 51.5×36.5cm 水彩
(右)《水彩クロッキー》2019年 51.5×36.5cm 水彩

 

 《油彩クロッキー》2019年 41×31cm 油彩


《油彩クロッキー》2019年 41×31cm 油彩

 

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佐藤 陽也 (Yoya Sato)

 

1981年福島県生まれ。2008年明治大学経営学部会計学科卒業。13年第48回昭和会展松村謙三特別賞受賞(銀座・日動画廊)、第89回白日会展損保ジャパン美術財団賞・会友奨励賞受賞。15年第91回白日会展富田賞受賞、白日会会員となる。個展・グループ展多数。19年8 月21日~27日第30回明日の白日会展(日本橋髙島屋S.C.)に出品、10月14日~19日銀座・光画廊にて個展開催予定。

 


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