[画材考] 洋画家:松原修平「挫折と情熱」

2020年05月25日 17:00 カテゴリ:コラム

 

小学生の頃、絵画教室で描いた水彩画。

小学生の頃、絵画教室で描いた水彩画。

 

イーゼルには、塗りつぶした絵がある。何度も描き直している為、ぬりかべになっている。

 

搬入間近はドン詰まり。ぬりかべ君からいつも逃げたいと思っている。あぁ……私は絵を描くことによって何かに救われているのか? それともただ翻弄されているだけなのだろうか……? なんてね。制作中は苦悩の連続。イーゼルの前に立つ勇気を、誰か僕に下さい。

 

「絵を始めたきっかけは?」……何だろう?……。
「やめない理由は?」……やめない?……それはきっと、少年期に受けた忘れることのできない敗北感。

 

小学生の頃に絵画教室で描いた水彩画。右下の坊ちゃん刈で目のくりっとした彼は、神童の様に絵が上手かった。衝撃的だった……絶対に勝てない。彼への畏怖と、自分への絶望感。悔しくて悔しくてたまらなかった。

 

あれから長い歳月が過ぎた。彼の時間はあの時の少年のままで止まっている。

 

もしも彼が生きていたら、今どんな絵を描いていたのだろうといつも思う。私がどんな絵を描いてみせようが、彼に追いつくことは永遠にできない。
少年期に胸に刻まれた挫折と、僕の中で生き続ける彼。才能ある作家にひどく打ちのめされても、あの時の挫折感があるから、今はそれを情熱に変えることができる。

 

水彩画に目を向ける。「そろそろぬりかべに、立ち向かえよ」と私に言ってくる。あの頃の僕と彼が。

 

《囁き》53.0×65.2㎝ 油彩

《囁き》53.0×65.2㎝ 油彩

 

(左)《FACE》31.8×40.9㎝ 油彩 (右)《ピエロ》31.8×40.9㎝ 油彩

(左)《FACE》31.8×40.9㎝ 油彩
(右)《ピエロ》31.8×40.9㎝ 油彩

 

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松原 修平(まつばら・しゅうへい)IMG_20200508_232631
1982年千葉県生まれ。現在第一美術協会会員。
2007年第一美術展初出品、以降毎年出品を続け、同展にて12年第一美術作家賞、15年文部科学大臣賞、17年優秀賞受賞。
5月18日(月)~30日(土)、銀座・ギャラリー惣にて個展開催。

 

【関連リンク】松原修平(Instagram)


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