画家が一万人いれば一万通りの独特の色彩感覚がある。
そもそも色の見え方には個人差があり、私たちが同じ色だと認識して見ている色は厳密には同じ色ではないという。自分の絵を国外で展示する際「あれこんな色だったかな」と思うこともあるくらい、自然環境にも左右される。
それくらい、不確かであり、個々の感性が反映されて表現されるのが色なのだ。
作品の色彩について注目して頂くことが増えていくうちに、建築の色彩監修などの、色を選択する仕事や、色について人前で話す機会も増えた。
そういった場面で必ずというほど登場するのが「日本の色」という言葉であり、大抵の場合は伝統色を意味している。確かに、平安時代の自然への観察や教養に基づく色の機微や、江戸時代身分制度の中で工夫され楽しまれてきた色幅などは、今見ても心揺さぶられる魅力がある。
一方で「日本の色」とは現代の日本に暮らす私たちの周りにもあるはずであり、改めて見つめ直す必要を感じた。そこで現在、カッティングシート等を製造する株式会社中川ケミカルの色彩研究室が生み出したNOCSというカラーチャートをベースに「日本の色」をリサーチするプロジェクト(https://nihon-no-iro.jp)を行っている。
様々な背景を持つ方々にインタビューをし、ワークショップを通して「今の日本の色」を問い続けているが、見事にいろいろな色が挙がってくるので大変興味深い。
色について、遠くをぐるりと見渡すようなリサーチを行いながら、アトリエでは自作の色彩と向き合っている日々である。
流 麻二果(ながれ・まにか)
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