弘法大師以外の人は、上手に筆を選びましょう…という意味だととらえています。絵具箱にお金をかけても絵はよくなりませんが、絵具や筆や下地は絵の出来に直結するのでコストをかける価値のある部分だと思います。
今回は筆について書かせてもらいます。画材屋さんへ行くと刷毛から面相筆まで材質も様々な筆が置いてあります。広い面積を塗るのに面相筆ではわたしの根気が続きませんし、細い線を描くのに刷毛では超絶技巧を要します。やはり筆は選ぶとそれなりの恩恵があります。
ちなみにわたしは油絵を描いていますが、使う筆は刷毛、習字用の筆、日本画用、水彩画用、油絵用、歯ブラシなどいろいろです。「え? いいの?」と言われそうですが、きちんと洗いさえすればどれを使っても大丈夫です。
一日の終わりに筆洗で洗い、お湯と石鹸で洗い、クサカベのブラシソフターをつけておけば、次も新品のような状態で使えます。少しよい筆を買って自分へプレッシャーを与えるのも、きちんと手入れをする習慣づけにはよいかもしれません。
愛着を持ち、丁寧に扱うと、自然と付き合いも長くなります。そうすると、その筆がどういう場面で実力を発揮するタイプなのか、くたびれてきたのか、熟練となり若い時では出せない味が出せるようになってきたのか、などが分かるようになってきます。
より良いものを目指す弘法大師でないわたしたちは、そうやってあの手この手で筆の恩恵も与っていきましょう。
長船 善祐 (おさふね・ぜんすけ)
1982年大分県生まれ。
日展、白日会展に入選。現在、白日会会員。
12月2日~8日 静岡伊勢丹にて個展開催予定。
【関連リンク】長船善祐 油絵日記