歩いている時に、道端に落ちているものを拾って帰ることを日々の喜びにしています。
葉っぱや石など落とし主が探していなさそうなもので、目について気に入ったものをカバンやポケットに入れて持ち帰ります。気に入ったとはいえ拾ったものですのであんまり大切にはしておらず、帰宅途中で粉々になっていたり、放ったらかして虫が湧いたり、無事形を成しているものたちが手元に残り、時間が経つほどに愛着がわきます。時々眺めては悦に浸り、時にはモチーフにもなります。
中でも見つけたら必ず拾ってしまうのが蝸牛の殻で、街中ではあんまり見かけないので余計に「お!」と思ってついつい手が伸びてしまいます。もう癖のようなものです。
私は茶色っぽい殻皮が剥がれおちた白い殻が大好きで、そんなのばっかり集まっていますが、白の中でも透明感のあるもの、不透明なガシッとしたもの、うっすら色味のあるものなど。形もふっくらしたやつから平べったいやつ、巻具合などなかなか見ていて楽しいのです。
出身の山里ではよく転がっていたものでしたが、子供の頃、落ち葉だらけの山中で一粒の蝸牛の殻を見つけた時には大興奮してずっと大切にしていた覚えがあります。それも腐葉土の中で真っ白になっていて、大きくてヒビや欠けもなく、これは確かに美しいものだと知ったように思います。
そういったようなことが私の美意識の原点であり、それを忘れたくなくて今でも何かしら拾って来るのかもしれません。
江森 郁美(えもり・いくみ)
1987年長野県生まれ、2012年広島市立大学大学院修了。ヴェロン會同人。
3月1日(月)~11日(木)銀座・高輪画廊「第8回Femmes展」に出品予定。