自然が生み出す形は不思議で美しくて面白い。私は海に行くと貝殻を探して歩く。貝殻だけでなく海の石や木も拾う。スケッチ取材に行くと当初の目的と関係がない落ちた実や葉っぱに目が止まる。道端に落ちたどんぐりは帽子がついているものを探して、ポケットに入れて帰る。描いていた花もドライにできたらなるべくとっておく。あとで形を確認したり、インスピレーションを得るために重宝するためだ。移り変わる季節を描き留めていくのは大変で、多くの画家は写生をしておそらく何冊もの画帳あるいはスケッチブックをもとに作品をつくっていく。料理人のレシピのように絵の横にメモ書きされたものや、丹念に彩色されたスケッチを見ることが私は大好きだ。
私にとって画帳と同じ役割をするのがこれらの収集物だと思う。
現場から採集した貝殻や海の石は、その日の太陽の輝きや潮の匂いを吸収していて、いつ見返しても感動が薄れない。通販で買った貝殻もある。それらは派手でどこかよそいきの顔をしているが、それはそれでミステリアスで楽しい。私の絵画シリーズ「Origin」や「AQUA」の制作は、これらの収集物を机に並べ、眺めることからはじまる。不思議な曲線やどうやってできたのかわからない変テコで面白い模様や色を眺めて、いつしか巻貝の螺旋を登ったり降りたりして海の底のうねりを想像して歩いてまわる。そうして心の奥に感じた興奮や畏怖を確認して制作にとりかかる。
菅 かおる(かん・かおる)
1976年大分県生まれ、現在京都と福岡を拠点に活動中。
7月1日~7日個展(東武百貨店船橋店)、7月14日~20日第6回グループホライゾン(日本橋髙島屋)、9月15日~21日個展(大丸神戸店)、9月23日~29日二人展(東急たまプラーザ店)