[フェイス21世紀]:寺内 誠〈画家〉

2021年11月05日 14:30 カテゴリ:コラム

”素材と対話を重ねる中で”

ギャラリー広田美術にて 10月7日撮影

ギャラリー広田美術にて 10月7日撮影

 

光の当て方で人やモノの見え方は如何様にも変容する――。画家・寺内誠は、記憶とイメージの移ろいをテーマに、光の戯れをキャンバスに描きこんでいく。日常や旅の写真に材を取ったその絵画は、現代的でありながらもどこか郷愁を湛えており、重層的な時間の余情を感じさせる。

 

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《afterimage》2021年 60.6×72.7cm 油彩、パネル

 

子供の頃から絵の道を志していたわけではない。中学・高校時代はバスケ部に所属し、絵はあくまで趣味の範疇。しかし、近所にあるピアノ教室のチラシの絵を依頼されるなど当時から得意だった。今日への分水嶺となったのは、その時にお礼としてもらった油絵具。水彩のように思い通りに描くことが出来ず、もどかしさが募った。

 

藝大の油画専攻では、「なぜ絵を描くのか」という問いを突き付けられ、悶々とした日々を過ごした。映像やインスタレーションを表現手段として選ぶ学生も多い中、寺内は絵を描き続けた。大学院では坂田哲也研究室に在籍し、画家として自身の表現を貫く生き方を学んだ。

 

モネやリヒターといった「光の画家」に私淑する寺内。制作においては、はじめに自ら撮影した写真を基にイメージを描き、浮かび上がってくる無意識のイメージをその都度塗り込めていく。モチーフと交わす対話がはっきりとした輪郭を伴って積層していくのは、まさに油彩という技法ならでは。「今も油絵具を使いこなすのは難しいんですが、使いこなせないからこそ想定を超えた表現が生まれます」。

 

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《fly away》2021年 112.0×145.5cm 油彩、パネル

 

11月12日~27日にはギャラリー広田美術で個展を開催。近年はモチーフをより抽象的な表現で描いた作品にも挑戦している。「なぜ絵を描いているのかいまだに考えます。しかしそれでも描き続けていること自体が、私にとって重要なことなのだと思います」。寺内はこれからも、自らの問いを絵画に託し続ける。

(取材:柴田悠)

 

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《afterimage》2021年 72.7×60.6cm 油彩、キャンバス

 

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寺内 誠(Terauchi Makoto)

 

1980年東京都生まれ、2006年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。卒業制作展(東京都美術館)出展作品は、紫蜂賞を受賞、江戸川学園の買上げとなる。04年には「トーキョーワンダーウォール公募2004」にてトーキョーワンダーウォール賞を受賞し、翌年には東京都庁舎で開催された「トーキョーワンダーウォール都庁2004」に出展。11月12日㈮~27日㈯ギャラリー広田美術にて個展「寺内誠展 -fragments-」を開催予定。

寺内誠 ウェブサイト

 


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