2020年に子供を出産したことで私の生活は一変した。
それまでの思い付いた時にスケッチに出掛けたり制作をしていた生活から、子供が寝る時間だけが自分の時間(制作時間と睡眠時間)になってしまった。
以前は余計なことばかり考え悩んで筆が止まっていたけれど、絵を描く時間が無くなってしまうと、描くことは自分にとって欠くことのできないものなのだと実感し、描ける喜びを改めて感じることが出来た。
自宅からアトリエまで片道30分。
通う時間が勿体無いので、小さい絵は自宅で描くことにした。
それまで食卓として使っていたテーブルを絵の作業台にして、自宅に絵を描くスペースを確保した。130×65cmの木のテーブルは絵を描くには手狭だけれど、自宅で描けることが嬉しい。
30号位ならばなんとか描ける。絵皿は重ねて足元に置き、絵の具も置く場所がないので袋にまとめて引き出しに。制作の時間が取れなかった日も必ずこのテーブルと向かい合うようにしている。
描いている絵と自分の気持ちが離れないように。
今の制作環境は絵を描くには雑多過ぎるかもしれない。
里芋を煮ている横で、膠の鍋を煮たり。
隙を見て描いていても「ママー‼︎」と呼び戻されたり。
けれど、不思議と絵を描くことと、生活のあれこれをすることは乖離していない。
日々の営みと、絵を毎日ひとつづつ積み上げていく作業は似ているのかもしれない。
ここ数年は息子と散歩した時に見つけた草花がよくモチーフになっている。
生活の延長線上に今の私の絵はある。
青木 惠(あおき・めぐみ)
1983年東京都生まれ。2008年多摩美術大学大学院博士前期課程日本画専攻修了。個展・グループ展など多数。1月24日~30日京都大丸アートギャラリー「Essence展」出品。
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