《自在鬼蜻蜓(ジザイオニヤンマ)》2020年 11.5×12.0×4.0cm 銅、真鍮、青銅
「なぜ虫を作るのか?」
これまで取材を受けてきた中で一番多く聞いた質問かもしれません。それは昆虫という生物が、人間と一番遠い所にいる生物だと感じているからです。
普段自在置物を作っている中で、短くても1カ月以上は実物や標本を前に観察しながら制作していると、我々哺乳類である人類とは明らかに違う進化を辿ってこの形になったことに気が付きます。
生きて増え、環境に適応して残る。このシンプルなプロセスを延々と繰り返し競争していく果てに、今現在世界中で見られる様々な生き物の形があります。昆虫はその中でも特に進化のスピードが速いがゆえに圧倒的な多様性を持っていて、その棘の一つ、角の形一つに、生きて競走していく上での意味があり、その生物がその形になるまでの年月に思いを馳せ、進化の秘密に近づいた気がするのです。
骨格標本と壁面を覆う昆虫標本
アトリエの壁には、所狭しと様々な標本が飾ってあります。これは、普段の生活から目に付くすべての場所で昆虫を意識できるようにと配置しています。日々昆虫に囲まれ、他の生物との違いと共通点を探る。そうして人間と遠い生き物である昆虫を深く知っていくと、我々人間も全く同じ地球上に生きる生物であると、改めて意識することができます。
死を知ることで生を知るのと同様に、昆虫を知ることで人間を知りたいのです。
《自在大蟷螂(ジザイオオカマキリ)》2023年 13.0×5.0×6.0cm 銅、真鍮、青銅
《自在背赤二股鍬形(ジザイセアカフタマタクワガタ)》2022年 10.0×7.5×3.5cm 銅、真鍮、青銅
満田晴穂 レントゲン藝術研究所準備室©︎2022
【関連リンク】満田晴穂と自在置物標本箱