”他者について想像する”
京都を拠点とする気鋭画家・松平莉奈の百貨店初個展が髙島屋京都、横浜、日本橋と巡回する。山水画への関心から展開した絵画に粘土模写も交えた意欲作約50点が並ぶ。
元々油画志望だったが「日本画やなぁ」、画塾で先生が後ろを通るたびに呟く。そこで油絵を描かせてもらうと、にわかに油絵具が苦手だと自覚した。また、2005年5月の『美術手帖』「『日本画』ってなんだろう?」で特集された現代の解釈による日本画に、何か物足りなさを覚えたことも大きい。
「だからこそ日本画に挑戦したい、自分事として深堀りしがいのある分野だと感じました」。
作品の主なモチーフは当初から“人物”であり、“他者について想像すること”が創作の核にある。
「学部時代、デッサンの課題で休憩時間にモデルさんと好きな本やペットの話をすると、相手のそういうところを思いながら描いてしまう。でもそれは課題に不要で、相手について想像すること、相手との距離が重んじられないことがずっと引っかかっていて。“人体”でなく“人物”をやりたいなと」。
目の前の相手でも歴史上・空想上の人物でも、徹底したリサーチを重ね、想像の及ぶところ/及ばぬところに思惑を巡らせ筆を執る。古典籍を引用することも多く、コロナ禍では絵手本のデジタルアーカイブを模写する試みにも挑んだ。
「ある種の反発心を持って大学に進みましたが、いざ日本画を勉強すると、これは大変な世界だぞと(笑)。古典だけでなく平成の作品までも含めて、先人たちの仕事の重みがようやく分かるようになり、同時に、自分のほしい美術はやはり自分でつくっていかなければと改めて感じています」。
これまでは展示機会ごとに絵のスタイルに幅を持たせてきたが、今後は独自性や造形力を高めることが課題。そして、日本画の領域に収まらず発表の場をより広く、海外も視野に、と展望を語る。更なる飛躍を前に、まずは最新個展で己の現在地を示す。
(取材:秋山悠香)
松平 莉奈(Matsudaira Rina)
1989年兵庫県生まれ、2014年京都市立芸術大学大学院修了。11年臥龍桜日本画大賞展大賞、15年VOCA展佳作賞、16年続京都日本画新展優秀賞、17年京都市芸術新人賞、20年京都府文化賞奨励賞受賞。京都・東京を中心に個展、グループ展多数。岐阜県高山市、京都市京セラ美術館に作品収蔵。
個展「天使・花輪・ケンタウロス」が7月3日(水)~8月(月)髙島屋京都店を皮切りに7月24日(水)~29日(月)髙島屋横浜店、10月30日(水)~11月4日(月・休)髙島屋日本橋店巡回予定。
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