今年の夏は「山形ビエンナーレ」に始まり、「山形ビエンナーレ」に終わった。勤務先である東北芸術工科大学の主催による「みちのおくの芸術祭」は「山をひらく」をテーマに、市民参加型のコミュニティースクールから探り出すアートの新しいかたちの模索、アートの視点からの観光資源の発掘、発信や、地域固有の文化に根ざした場つくり、教育的視点による学生たちとの共同プロジェクトなど、音楽、詩、ファッションなど、様々なジャンルをこえた創造の場が山形市各所で生まれた。
その中で、私は学生たちと共にアートプロジェクト「東北画は可能か?」のリーダーとして、学内にある巨大なギャラリーを作品で埋め尽くし、会期中には多くのイベントを開いた。2009年に東北地域における美術のあり方を考えるチュートリアル活動として結成された「東北画は可能か?」はこれまで地元の山形はもちろん、青森、福島などの地域に入り込み、フィールドワーク、勉強会などを重ね、多くの作品をつくり全国各地で展覧会を行ってきた。東日本大震災を経験し、多くの地域が新しい価値観の創造、未来への仕組み作りを模索し始めている。わたしはこれからも「東北画は可能か?」を通してこの辺境である東北、日本の美術を探していきたいと思う。
(1973年生まれ、美術家、東北芸術工科大学教授)