スーパーボール
いつの頃からだろうか、カラフルなスーパーボールを画面の中に描き始めたのは。
原色に近い色彩で花などを描き始めた30代始めの頃、メインのモチーフの脇役にブリキのおもちゃなどを探していた。その流れで数色の色が渦を巻いたスーパーボールが気に入り描くようになったと思う。玩具屋さんや駄菓子屋さんに立ち入ってはより美しいものをと買いまくった。何しろカラフルなボールを僕がすべて買ってしまうので、そのあと店に残ったスーパーボールは哀れな単色のものばかりになってしまう。駄菓子屋の老爺の呆れたような、困ったような顔を今も思い出す。そのカラフルなスーパーボールの美しさは抽象画家も羨むような美しさだ。
僕の作品の場合、広い色面の配置のみでは味わいに欠ける。美の表出に加え、人や時を思い、具体的にモノを描いている。そこに小さな色が沢山ちりばめられたスーパーボールを置くと、花・おもちゃ・蝶や月、そしてバックの色と結びつき、響き合う。
僕の絵画は抽象画のような効果を目指したリアルな具体画なのだ。
広い画面の中では、スーパーボールは小さな色の集合体でしかない。しかしそれが輝く、まさに「神は細部に宿る」ように。
山内滋夫 (やまうち・しげお)
洋画家、写実画壇会員。個展が、7月8日(水)~14日(火)髙島屋京都店にて開催。その他、「青木繁『海の幸』オマージュ展」(8月、永井画廊)、「新宿写実画壇展」(10月、ギャラリー絵夢)など、多くの発表を予定する。
「新美術新聞」2015年6月1日号(第1377号)5面より