今年3月に耐震補強工事を終えたばかりだった。その7カ月後、10月21日(金)午後2時7分に発生した震度6弱の地震で倉吉博物館も大きな被害を受けた。
余震が収まらない翌22日、気象庁の係官2人が臨時休館を余儀なくされた博物館を訪れた。地震計が設置してある場所の周囲300mで実際にどのような被害が出ているか調べているという。M6.6を記録した地震計は博物館から約80m離れた倉吉市役所(昭和31年 丹下建三)に設置してある。市庁舎のガラスがほとんど割れるなど大きく被災し、頻繁にテレビにも登場した建物だ。外観上ほとんど損傷の見られない博物館の館内に係官を招き入れ、壁の亀裂や大型展示ケースが動いた場所に案内すると、驚いた様子で記録を撮っていた。
倉吉博物館は開館42年を数え、歴史民俗資料館を併設し博物館に5室、資料館に2室の計7室の展示室からなる。このうち一番展示スペースの広い2階の第5展示室(考古常設室)の被害が大きかった。壁には深く亀裂が入り倒壊が危ぶまれ、展示台から落下し全壊した土器もある。転倒防止のためテグスで固定していたが、ピンが外れて転落した資料もあった。一方テグスのお陰で転落を免れたものも見られた。また、専門業者により解体修理した土器は、転倒しなかったこともあって、全く損傷が無かった。土器の破片の繋ぎ合わせを劣化し易い接着剤ではなくアクリル系樹脂を使用していたこと、石膏を用いずに復元し組み立てていたことが損壊を免れた一因である。考古資料の今後の修復作業等に大きな示唆を得た。その他、美術資料や野外彫刻には、被害は見られなかった。
学芸員も、避難所運営や家屋被害調査など本来とは異なる仕事に従事せざるを得なかったが、今後の復興への道筋を探る上で重要な業務であった。
(ねれい・てるお/倉吉博物館 館長)
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