今年の美術界の話題となった東京ステーションギャラリーの再開館から2ヶ月。オープニングを飾る現代作家展「始発電車を待ちながら」が好評開催中だ。
今展には、1組8名の作家による映像作品やインスタレーションが並ぶ。まずは3階展示室。目に飛び込んでくるのは、壁という壁に模型の青いレールを走りめぐらせたパラモデル(林泰彦・中野裕介)のインスタレーション。続いて、「あおり」と呼ばれる遠近法によりジオラマのように東京駅を撮影した本城直季の作品が展示されている。なおオープニング後、本城が丸の内駅舎完成後を撮影した新作が加わっている。そして暗室に入ると、クワクボリョウタの作品。ライトをつけた模型の電車が繊細かつ美しいシルエットをみせながら走っている。
続いて2階展示室へ向かうと、「2000年後からみた現代社会」という壮大なテーマによる柴川敏之の立体作品が広がる。さらに、自らが滞在した場所にちなんだ素材を布の地図に縫いつけて表現した秋山さやか、来場者が自分の交通系ICカードを置くと過去の履歴が映像化される廣瀬通孝の作品を楽しむことができる。終盤は、列車の車窓風景を撮影し効果的にみせた大洲大作、線路の風景などを細密に描いた画面上に同じ場所で撮影した映像を重ねるキャンバスプロジェクションのヤマガミヒロユキ。最後は、東京ステーションギャラリーのロゴもデザインした廣村正彰による群像の映像作品で締めくくられる。
世代もジャンルも異なる作家たちだが、いずれも「東京駅」や「鉄道」を着想源にした作品。モチーフの豊かな広がりを提示すると同時に、駅舎という特殊な展示空間の中で各々の作家による創意工夫を感じとることができるだろう。また、2012年12月20日(木)15時より、秋山さやかによる「アーティストトーク」が開催される(参加無料、事前申込不要、要観覧券)。一度出かけた人もまたぜひ足を運んでみてほしい。
東京駅復原工事完成記念展
始発電車を待ちながら
―東京駅と鉄道をめぐる現代アート9つの物語
【会期】 2012年10月1日(月)~2013年2月24日(日)
【会場】 東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
☎03-3212-2485
【開館時間】 平日11:00~20:00 土・日・祝日 10:00~18:00
(入館は閉館30分前まで)
【休館】 月曜日、祝日のとき翌日、12月29日(土)~2013年1月1日(火)
【料金】 500円 中学生以下無料
【関連リンク】 東京ステーションギャラリー
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