オノサト・トシノブと石井壬子夫。群馬県桐生市を舞台にそれぞれの世界を追求した2人の画家の、生誕100年記念展が同時開催されている。
朱を基調とした幾何学形体による錯視的な作品を制作し、日本の抽象絵画の草分け的存在として活動を展開したオノサト・トシノブ(1912~86)。74歳で他界するまで54年間にわたり桐生を離れず、盟友の瑛九とともに前衛美術の道を歩み続けた。その芸術の源流ともいえる最初期の具象絵画から50年代に現れた「丸」の絵画の時代、そして激しさを増した晩年の作品まで油彩画と水彩画86点により展観する。
一方、画家を志すも戦争という激動の時代の中、美術教員としての道を長く歩んだ洋画家・石井壬子夫(1912~90)。自らは教師であり、画家ではないとして生涯1枚の絵も売ることは無かった石井の作品は、暗く重く、戦争への深い痛恨の念が痛々しいまでに感じられる。20代から晩年までの膨大な作品から厳選し、遺された制作ノートやスケッチと共に紹介する。
戦後の抽象絵画を牽引し、国際的に華々しい活躍を見せたオノサトと、知られざる孤高の画家として、自己の存在を深く問い続けた石井。桐生を代表する2人の作家の対照的な美の世界が、今、響き合う。
【会期】 2012年10月5日(金)~12月16日(日)
【会場】 大川美術館(群馬県桐生市小曽根町3-69)
☎0277‐46‐3300
【休館】 月曜
【開館時間】 10:00~17:00 (入館は16:30まで)
【料金】一般1,000円、高大生600円、小中生300円
「新美術新聞」2012年11月21日号(第1297号1面)より