【日本橋】 喜寿記念 大矢紀日本画展

2013年05月17日 17:30 カテゴリ:日本美術院

 

 

「浄」松本市美術館蔵 再興第93回院展出品作

「浄」松本市美術館蔵 再興第93回院展出品作

更なる期待も抱かす記念展

 川口直宜 (泉屋博古館分館館長)

 

 

喜寿を寿ぐ『喜寿記念 大矢紀 日本画展』が開催される事となったが、古稀記念展も日本橋三越で開かれているので、ゆかりの展観と言えるであろう。冠記念展としては、平成14年に『画業50周年大矢紀展』が開催されており、それに結びつけて考えてもよく、節目ごとに企画が催される事は、期待感を大いに持たれている証左でもあり、本展は、今後の展開への重要な位置づけができる企画と評価されよう。

 

今展の出品作は、すでに発表された作品と新作で構成されているが、ここ数年の作品に触れてから大矢の藝術の特質を述べ、そこから予想されうる将来への可能性にも触れ、個人的な希望についても述べてみたいと思う。

 

何故ならば、『喜寿記念展』は飽くまでも一つのステップであり、今後の更なる進展の可能性を内包しているからである。「人生も永し、されど藝術も永し」と言い換えたい思いにかられる。

 

「白富貴」

「白富貴」

では少し遡って院展関連の作品を顧みると、平成20年の第63回春の院展「彩夏馥」、同21年では、第64回春の院展「聖花」、再興第94回院展「西方山湖」、同22年の第65回春の院展「長寿大虹」、再興第95回院展「妙見天空」、同23年には、第66回春の院展「共有美」、再興第96回院展「日本海(明日も陽は昇る)」、同24年は、第67回春の院展「凛花香栄」、再興第97回院展「須弥山図」、同25年の最新作は、第68回春の院展「夏美し」の諸作となる。

 

今回出品される「聖花」、「長寿大虹」、「共有美」はいずれも花鳥画の系譜であるが、再興院展作は風景画に属する作であり、テーマの棲み分けがなされている訳で、いわば大矢の志向する世界の一端が理解されると言えよう。さらに、花鳥画には装飾的、平面的表現が認められ、静物画の視点から離れた日本画家としての矜恃を感じさせる。一方、風景画は、何よりも心象風景世界であり、強靭なマティエールが看取される。その世界は、山本丘人の作風を思わせるものがあって好ましく、その意味で、本展に平成20年再興第93回院展「浄」(内閣総理大臣賞受賞作)が出品される事は、大変喜ばしい。今後の大矢の展開は、この作が基盤となるからである。

 

「夏彩」

「夏彩」

今回の新作の「夏彩」は桃と草花を組み合わせた作、季節感、色彩が見どころとなっており、白牡丹の「白富貴」は、大輪の牡丹が見事な風格を見せている。「早春賦」は、紅白梅と慈姑が薄紅色を背景に配され、薄紅色が曙を暗示し、梅が花開く時をよく示している。

 

最後に将来への可能性、個人的な希望を述べたいが、それは、人物画への取り組みで、これは、切に望みたいと思う。

 

【会期】2013年5月22日(水)~28日(火)

【会場】日本橋三越本店本館6階美術特選画廊(東京都中央区日本橋室町1-4-1)☎03―3241―3311

【休廊】 無休 【料金】 無料

【巡回】 2013年7月9日(火)~15日(月・祝) 新潟三越6階美術ギャラリー・工芸サロン

 

作家によるギャラリートーク

日本橋三越 5月25日(土) 14:00~

新潟三越 7月13日(土) 14:00~

「新美術新聞」2013年5月21日号(第1312号)1面より

 


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