日本の自然や風物を詩情豊かに表現し、郷愁を誘う叙情的な作品が、今なお多くの人々を魅了し続ける日本画家・川合玉堂(1873~1957)。その生誕140周年を迎え、東京・広尾の山種美術館で大規模な回顧展が開催されている。
幼いころより絵に親しみ、日本画家の望月玉泉、幸野楳嶺に円山四条派を、橋本雅邦に狩野派の画法を学び、更に西洋絵画の影響も受けながら自己の絵画世界を追求し続けた巨匠・川合玉堂。1940年に文化勲章、57年には勲一等旭日大綬章を受章したほか、レジオン・ドヌール勲章(フランス)や赤十字第一等名誉章(ドイツ)を贈られるなど、国内外で高い評価を受けた。
本展は、初期の代表作「鵜飼」や上京して橋本雅邦に師事した頃の「渓山秋趣」、琳派や南画等さまざまな研究を経て、独自の境地を切り開いた転換期の作品と言われる「二日月」や「紅白梅」、そして晩年の情緒深い穏やかな画境に至るまで幅広く紹介。また、初公開となる「写生帖」(前期・後期で場面替え)、長らく公開されなかった「柳蔭閑話図」(7/7まで公開)など貴重な作品群に資料も併せて展示する。同館所蔵の全71点を中心に他館からも代表的な作品を借用し、玉堂84年の生涯を作品から振り返る構成となっている。
所蔵の全作品を展示するのは開館以来初の試み。同館の山﨑種二初代館長が作家との交流の中で収集した作品を他館の作品や資料と合わせて観ると、玉堂のもつ多様性が見えてくるはず。日本のふるさとやこころを描き続けた川合玉堂の魅力をこの機会に心ゆくまで堪能してほしい。なお、前期(6月8日~7月7日)と後期(7月9日~8月4日)で一部展示替えあり。
【会期】 2013年6月8日(土)~8月4日(日)
【会場】 山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
※アクセス
☎03-5777-8600
【営業時間】 10:00~17:00 (入館は閉館30分前まで)
【休館】 月曜(祝日の場合翌日)
【料金】 一般1200円 大高生900円 中学生以下無料
【関連リンク】 山種美術館
「新美術新聞」2013年6月21日号(第1315号)4面より
【関連書籍】
川合玉堂の世界【重版】 玉堂芸術の見どころを丁寧に解説
監修:玉堂美術館
序文:鈴木進、奥田元宋
解説:宇佐美紅中 他
体裁:B5版変型/上製
総頁:96頁(カラー64頁)
図版:カラー63点
定価:本体2000円+税
送料:350円