深い森を抜けて出会う湖のように
失われた版画技法メゾチントを復興し、独自に生み出したカラー・メゾチント技法による静謐の空気漂う繊細な作品で世界の人々を魅了した銅版画家・浜口陽三(1909~2000)。新しい時代の美術表現として銅版画を選んだ浜口は、1953年よりパリを拠点に活動し、東京国際版画ビエンナーレ、サンパウロ・ビエンナーレなど国際コンクールで次々と受賞を重ねた。その後、サンフランシスコでの活動を経て1996年に帰国。持ち帰った多くの作品を展示する美術館としてミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションが開設された。現在、同館では浜口の作品を中心とした企画展をはじめ、イベント、版画教室などを開催、銅版画の魅力を広く紹介している。本展では、詩人で美術にも造詣の深い高橋睦郎氏を顧問に、浜口の銅版画と池内晶子、福田尚代、三宅砂織の3名の現代作家を組合わせて紹介する。現代作家による作品を展示するのは同館としてははじめての試み。
池内明子
1967年 東京都生まれ
1991年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業 O氏記念賞受賞(大橋賞)
1993年 東京藝術大学大学院美術研究科壁画専攻修了
1998年 東京藝術大学大学院博士課程満期退学
1998年~2000年 文化庁在外研修(ニューヨーク)シティカレッジ客員研究員
福田尚代
1967年 埼玉県生まれ。
1990年 東京藝術大学美術学部油画科油画専攻卒業
1992年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
三宅砂織
1975年 岐阜県生まれ
1998年 京都市立芸術大学美術学部美術科卒業
1999年 英国 ROYAL COLLEGE OF ART 交換留学
2000年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
細い絹糸を用いたインスタレーションで、ものの広がり、雰囲気、微妙な心の動きを空間に現出させる池内に、言葉や書物、文房具を素材に、既成の文学にはない、はるかな物語を紡 ぎだす福田、カメラを用いない写真「フォトグラム」の技法によって、現実と似て非なる透明な風景を表す三宅。浜口の繊細 な世界観と見事に響き合う作品たちは、さながら深い森を抜けて出会う湖のように、新しい気配や光を感じさせてくれるだろう。
【会期】 2013年5月18日(土)~8月11日(日)
【会場】 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7) ※アクセス
☎03-3665-0251
【営業時間】 11:00~17:00 (入館は16:30まで)
※土・日・祝日は10:00~
※7月14日(日)は15:00まで
【休館】 月曜、ただし7月15日(月・祝)は開館、翌16日(火)休館
【料金】 大人600円 大学生・高校生400円 中学生・小学生無料(2013年12月まで)
【関連リンク】 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション
【イベント情報】
高橋睦郎氏と出品作家の座談会
【日時】 7月14日(日)16:00~17:30
【定員】 60名 (電話予約にて先着順)
※7月4日(木)現在空席あり
【参加費】 入館料+300円 お茶とお菓子つき
出品作家によるギャラリートーク
■三宅砂織×飯沢耕太郎(写真評論家)
対談 「光のデッサン」
【日時】 7月28日(日)15:00~16:00
【定員】 60名 (先着順)
【参加費】入館料のみ
※トークの後、会場で1時間ほどティーパーティを開催。
「新美術新聞」2013年6月21日号(第1315号)4面より