京都市美術館開館80周年記念展
都を彩る美の祭典―優品でたどる80年
尾﨑眞人(京都市美術館学芸課長)
大型海外展や公募団体展の会場として歴史を重ねる京都市美術館。中でも特に、新進作家の登竜門「市展(現・京展)」は、今も続く公募展として、多彩な美術家を輩出してきた。今展では、第1回展受賞作から近年出品作まで約120点を展示。多様な表現から、80年の軌跡を感じとることができるだろう。
昭和8年に開催した「大礼記念京都市美術展」が成功すると、翌年1月19日の美術館評議員会は、昭和10年5月1日に開催する総合美術展を近畿・無名青年作家の登竜門と位置づけた。戦前は「市展」と称され当初から新人の登竜門であった。やがて広く京都芸苑の大家や中堅作家の出品も併せて、美術の祭典として都の春を彩るものとなった。
総合公募展開催の背景には京都の美術界の底上げと、新設した大礼記念京都美術館の常設展示場としての施設利用の意味があった。「京都市美術展」は「本市青年作家の奨励」を目的とするために各部門の作品を買上げすることを美術館評議員会において決定した。
紫章(賞金300円) 紅章(賞金200円)緑章(賞金100円)が設置された。第一回展では、紫章と紅章は工芸美術が受賞した。他の緑章は各科合わせて22名の受賞者があった。市展は初め京都の美術振興策であったと同時に「美術館」としての作品所蔵や常設展への制度を確立する役割も担っていた。
戦後は「京展」の愛称で昭和20年11月に開催され、全国公募展となった。しかし美術館は昭和21年3月29日に駐留米軍第58通信大隊に接収された。昭和27年5月1日まで進駐軍の美術館接収状態となった。そうした中「京展」は、京都市立美術専門学校、京都博物館そして丸物百貨店を会場とし開催された。その後昭和24年には会場の確保が困難なため京都市美術展は中断となった。昭和27年5月1日に正式に接収解除となり、7月1日に京都市美術館に館名を変更。翌昭和28年から第5回京展として再開した。
また同年新たに書部門を設置した。広く京都芸苑の大家や中堅作家の出品を促し、京都の祭典として再び都の春を彩るものとなった。平成11年から出品依嘱制度をやめ、審査員の一部に評論家を加えるなどの刷新を行なった。新人の登竜門と中堅作家の育成をめざした新生京展となった。
美術館選考による京都市美術館賞(=コレクション賞)として同賞は美術館買上げとなった。平成20年の「2008京展」より、芝田記念賞が洋画部門の具象絵画に設けられた。若手の具象作家の育成を目的とするものである。平成18年の「2006京展」より館長奨励賞を設け、更なる新人育成を促進した。「京展」に比較して新生「1999京展」以後の京展は、新人発掘と中堅発掘が役目となった。
【会期】 2013年6月14日(金)~8月18日(日)
【会場】 京都市美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町124)☎075―771―4107
【休館】 月曜、7月15日は開館
【開館時間】 9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
【料金】 大人、高校・大学生500円 小・中学生300円
【関連リンク】 京都市美術館
「新美術新聞」2013年6月21日号(第1315号)1面より