魅力の持続と変質の必然性
武田厚(美術評論家)
「意欲作を発表する勉強会」として発足した「十果会」。出品作家は昨年と同じく、相田幸男、今井信吾、大津英敏、奥谷博、木津文哉、絹谷幸二、齋藤研、桜井寛、瀬川富紀男、林敬二、平岡靖弘、松樹路人の12名。現代洋画壇を牽引するグループ展について、“持続と変質”をキーワードに武田厚氏の論考より紹介する。
十果会展は今回で35回展となる。1979年にスタートして以来35年を経たということである。その間、常に中身の濃い展覧会を世に問い続けて画壇における揺るぎない存在感を示してきた。こうした会の活動としては珍しい例と云っていい。実際のところ、メンバーとなる画家たちの表現者としての力量とそれぞれの作風に見る個別的な特質が明快であったことなどが、この会の人気と評価を支えてきたことは確かである。
そのグループとしての実力、いわば総合力のようなものがこれまで人々に与えてきた印象とはどんなものであったか具体的には把握していないが、一例を抽象的な言葉で端的に表すれば、観た後の充足感、つまり見応えある展覧会、という言葉に尽きるのではないだろうか。当然ながらメンバーである作家の仕事の主題や様式はそれぞれにほぼ定着している。このことはある面では観る側の期待に応えてくれる好ましい要素となるが、裏を返せばある種のマンネリズムを感じさせないとも限らない。にもかかわらずそうした危惧を払拭し、この会が有する独特の魅力を保ち続けてきたのは何故だろう。それは、制作上執拗に繰り返してきた作家個々の責任における自己内改造的姿勢の自覚とその実行によるものではないか。展覧会は、常にそうした活性化された意識の状況から生じた成果の集合体となっている。驚きや発見は会の鮮度を絶やさず、成熟度が会場を艶めかせてきた。
しかし課題もなくはない。構成メンバーは創立時から必要に応じて随時変更を迫られてきた。この数年の印象では世代間の格差のようなものも次第に目立ちはじめている。例えば創立時からの松樹路人や桜井寛らの仕事に見る主題の掘り下げや表現の深さへ向かう堂々とした姿をこの会の典型とすれば、新たなメンバーの仕事からはそれとは趣を異にする印象を受けてしまう。云いかえれば、十果会展らしからぬ十果会展へと何かが徐々に変質しつつあるように私は感じている。若干寂しさはあるが、しかし、それもまた新たな魅力となるのかどうか。
【会期】 2013年7月3日(水)~9日(火)
【会場】 髙島屋日本橋店6階美術画廊(東京都中央区日本橋2―4―1)☎03―3211―4111
【休廊】 無休 【料金】 無料
【巡回】 2013年7月17日(水)~23日(火)髙島屋大阪店6階美術画廊、7月31日(水)~8月6日(火)髙島屋京都店6階美術画廊、8月14日(水)~20日(火)ジェイアール名古屋タカシマヤ10階美術画廊
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「新美術新聞」2013年7月1日号(第1316号)1面より