スーパーリアルのその先へ
宮下真美(おぶせミュージアム・中島千波館 学芸員)
1961年中国広東省に生まれ、現在ニューヨーク在住の画家、楊紹良(ヤン・シャオリャン)。初個展となる本展では、人物画や風景画の大作を中心に展示を行う。
この企画展の開催のきっかけとなる作品が、2012年のアートフェア東京で靖山画廊のブースに展示されていた「遡済流光(そざいりゅうこう)」である。一隻の船に乗った男女の絵。現実的ではないのに、違和感を与えない、自然な雰囲気の絵に引き込まれる。特に水面に浮かぶ花や水流の表現の美しさには、目を見張るものがある。
本当に「きれいな」作品なのだが、楊紹良の作品は、現在過去を含めて、その画風だけではない。その全貌があきらかになる展覧会が、今回の「スーパーリアル 楊紹良展」である。
楊紹良は、当館で以前に開催した若手作家のグループ展「次代への表現展」に、1994年~1997年にかけて3回出品している。当時、そして今回も出品する「酒池肉林(しゅちにくりん)」、「酒宴長夜(しゅえんちょうや)」そして「後宮嫉恨(ごきゅうしつごん)」といった中国の故事をテーマとした初期の作品は、目を背けたくなるような残忍な情景、迫力ある生々しい描写が特徴的だ。当時から話題性があり、来館者の反響は大きかったと聞く。
つい最近まで筆を進めていた作品もあり、長い年月をかけて制作されたこれらの作品は、画家の思い入れが強かったことがうかがえる。見る者は、それらの作品を前に、何を思うのだろうか。
そのほか、中国の世界自然遺産である九寨溝を描いたシリーズも展示。写真を超えるような写実的な作品にもふれてほしい。
タイトルにある「スーパーリアル」という言葉には、画家の技法を一言で表現しながら、写実に描かれた作品を細部まで、もう少し言うと、画家の意図すら見てほしいという意味を込めている。画家は、ただ単に残酷に描いて目立たせようとしたためではなく、過去の歴史に対する反発やメッセージを見るものに投げかけるためであるからだ。
この機会に1点1点、じっくりと向き合ってみてはいかがだろうか。
【会期】 2013年8月2日(金)~10月8日(火)
【会場】 おぶせミュージアム・中島千波館(長野県上高井郡小布施町大字小布施595)
☎026-247-6111
【休館】 会期中無休
【開館時間】 9:00~18:00(10月から17:00まで)
【料金】 一般500円 高校生250円 中学生以下無料
【関連リンク】 おぶせミュージアム・中島千波館
楊紹良×中島千波 対談ギャラリートーク
【日時】 2013年8月3日(土) 14:00~
【会場】 同館第一展示室
【料金】 要観覧券
楊紹良によるギャラリートーク
【日時】 2013年9月14日(土) 14:00~
【会場】 同館第一展示室
【料金】 要観覧券