大胆な構図と豊かな色彩表現により型染の世界に新風を吹き込んだ染色家・柚木沙弥郎(1922年東京都生まれ、国画会会員)。東京大学で美術史を学び、学徒動員を経て大原美術館に勤務。その折に和紙に大胆な民芸模様を型染めした暦に出会い「民藝」に魅せられた柚木は、民藝運動のリーダー柳宗悦の紹介で芹沢銈介に師事、染色家の道を歩むこととなる。以来、国展を中心にこれまで活動し、染色のみでなく立体や絵本など、90歳をこえた現在も旺盛な創作活動を続けている。
今展では、このたび作家より寄贈された作品をはじめ、染色の新作や絵本の水彩原画、指人形などの立体作品を紹介。その中心となるのは、展覧会のタイトルにもなっている「いのちの旗じるし」シリーズだ。さながら戦国武将の旗じるしを思わせる作品群に、柚木は東日本大震災で被災した人々へのエールを込めた。旗じるしを掲げて命がけで戦った戦国武将のように、現在、命がけで戦っている人々を応援したい。素朴でモダンな気風と民藝のあたたかみをあわせ持つその作品から、柚木の思いの深さを感じ取ってほしい。また、小コーナーではパラオ諸島など南洋の島々の風俗や民話を研究、それらを題材に木彫作品を制作した彫刻家・島土方久功(1900-1977)の作品を紹介している。
【会期】 2013年5月2日(木)~8月18日(日)
【会場】 世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)☎03-3415-6011 ※アクセス
【休館】 月曜
【開館時間】 10:00~18:00 (入館は閉館30分前まで)
【料金】 一般200円 大・高校生150円 中・小生、65歳以上100円
※小中学生は土・日・休日は無料
【関連リンク】 世田谷美術館
「新美術新聞」2013年7月21日号(第1318号)4面より