1991年にガラス工芸分野で初めて国の「現代の名工」を受賞した黒木国昭(1945年宮崎県生まれ)。高校卒業後ガラスの世界に飛び込んで半世紀、西洋の素材と東洋の融合を求め、日本の伝統・文化・装飾美をガラスで表現しようと創作に打ち込んできた。
近年、ガラス工芸の本場・ヴェネツィアや台湾国立歴史博物館で展覧会を開催、日本の伝統美を新しいかたちで表わしたガラス作品は海外でも高い評価を受けた。
創作50周年を記念する今展は、ガラス人生の集大成となる作品400点以上が一堂に会する。数ある見所の中でも特に注目したいのが、「紅白梅図屏風」と「明月に雉・秋草図」。黒木が追い求める日本美の原点となった尾形光琳による作品を、二曲一隻(「紅白梅図屏風」)と、四曲の屏風(「明月に雉・秋草図」)としたものだ。高度な技術によって、琳派の装飾美をとらえた逸品である。
額仕立てで仕上げた作品では、江の島の「海の道」を参詣客が行き交う景観を表現した「相州江の島」(冨嶽三十六景シリーズ)、隅田川の川面からも楽しめるようにLEDを投入した東京の新名所「東京スカイツリー」などを展示。
ほかに、自身が工房を構える宮崎県綾町の照葉樹林の美しさをテーマにした「綾切子」や、エミール・ガレの技術を用い、新時代のアールヌーヴォーを表現した「新世紀ロマン」シリーズの新作が出品。同シリーズからは、旭日と雄鳥の凛々しい姿が印象的な「旭日雄鶏図」なども展示され、ガラスが放つ優美な光と色彩とともに、多彩な技法によって表現されるガラスの可能性を感じ取ることができるだろう。
【会期】 2013年9月18日(水)~24日(火)
【会場】 横浜髙島屋7階美術画廊(神奈川県横浜市西区南幸1-6-31)☎045-311-5111
【休廊】 会期中無休
【開廊時間】 10:00~20:00(最終日は16:00閉場)
【料金】 無料
【関連リンク】 グラスアート黒木
「新美術新聞」2013年9月11日号(第1322号)1面より