【竹橋】 竹内栖鳳展 近代日本画の巨人

2013年09月12日 13:56 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

今、京都の巨星を見直す

 

吉中充代(京都市美術館学芸課課長補佐)

 

重要文化財「班猫」 大正13(1924)年 山種美術館蔵 展示期間9/25~10/14(東京展) 11/12~12/1(京都展)

重要文化財「班猫」 大正13(1924)年 山種美術館蔵 展示期間9/25~10/14(東京展) 11/12~12/1(京都展)

京都に生まれ,近代日本画史の礎を築いた竹内栖鳳(元治元―昭和17,1864―1942)の過去最大規模の回顧展が、東京国立近代美術館と京都市美術館で開かれることとなった。国立美術館で初、栖鳳の作品資料を多数有する京都市美術館でも、栖鳳単独の大規模回顧は35年ぶりとなる。

 

栖鳳は四条派の幸野楳嶺に学びながら、積極的に諸派の画風を取り入れ,明治33(1900)年渡欧後は西洋での知見をもとに従来の絵画を見直し、新しい日本画を生み出そうと試みた。その際日本画か西洋画かという性急な二者択一に安易に応えず、絵画を含めた美術を広い視野で把握し、西洋と匹敵する発展をめざしたことがうかがえる。これは幼い頃より生活の中に自然と絵があった栖鳳だからこその視点ではなかろうか。そして栖鳳は、生涯にわたって常に新しい目で物を見、描くことを心がけ、写生を続けて、みずみずしく鮮やかな作品を次々に現したのだった。

 

「絵になる最初」 大正2(1913)年 京都市美術館蔵

「絵になる最初」 大正2(1913)年 京都市美術館蔵

本展では、栖鳳の最も初期に位置する明治10年代の作品から最晩年の作品まで代表作を網羅しながら、未完に終わった作品、日常の研鑽や作品ができるまでを物語る写生や下絵、栖鳳の原画にもとづく刺繍、染織などの資料を併せ,総合的に栖鳳の歩みを振り返る。重要文化財の《班猫》(山種美術館蔵)や希少な人物画《アレ夕立に》(髙島屋史料館蔵)などよく知られた作品に加え、展覧会等で人目に触れることがほとんどなかった作品、北海道から四国まで全国各地に散らばる作品を集める。大作を中心に壮年期までの前半生にスポットがあてられたのも特色である。

 

かつて「東の大観、西の栖鳳」と並び称された栖鳳。横山大観に比して回顧の機会があまりに少なかったといえるかもしれない。京都においてさえ、国画創作協会創設メンバーの一人土田麦僊をはじめ栖鳳が世に送り出した後進の仕事が、先に回顧されてきた面がある。その麦僊や西村五雲ら有力な弟子たちは師より先に逝った。彼らの回顧に接し栖鳳は自らの来し方と日本画の行く末をどのように考えただろうか。水墨、淡彩を基調にした作品が並ぶ本展は、そのような想像をもたくましくさせる。

 

京都市美術館が昭和8(1933)年昭和の大礼を記念する大礼記念京都美術館として開館した時、栖鳳は京都を代表する画壇の大家として評議員を務めた。戦後の接収を経、京都市美術館として再出発して以降、節目節目で栖鳳の作品を収蔵、50周年に際しては、《絵になる最初》をはじめ、栖鳳が最期まで手元に置いていた作品資料を一括して収蔵している。美術館開館80周年にあたる本年、栖鳳を一人の画家として、試みの跡を新たな視点で見つめ直す機会が訪れたと感じている。

 

※会期中展示替えあり。

 

【会期】 9月3日(火)~10月14日(月・祝)

【会場】東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)☎03-5777-8600

【休館】月曜ただし9月16日、23日、10月14日は開館、9月17日、24日休館

【開館時間】 10:00~17:00 (金曜日は10:00~20:00) ※入館はそれぞれ閉館の30分前まで

【料金】 一般1300円 大学生900円 高校生400円 中学生以下無料

【関連リンク】 東京国立近代美術館

【巡回】10月22日(金)~12月1日(日) 京都市美術館

 

特別講演会 「竹内栖鳳の芸術について -女性像にちなんで-」

【日時】 9月28日(土) 14:00~15:30 (開場は開演30分前)

【講師】 平野重光(美術史家)

【会場】 東京国立近代美術館講堂(地下1階)

【料金】 無料

※申込み不要。先着140名。

 


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