独立展や十果会での発表を中心に、2011年には佐久市立近代美術館にて回顧展「桜井寛展―モチーフと共に」が好評のうちに開催された洋画家・桜井寛(1931年長野県生まれ)。長年取り組むモチーフの新作を中心に、東京、京都、大阪の髙島屋を会場とする個展が開催される。
画家の郷里、長野県南佐久郡臼田町(現・佐久市)は、戦中に多くの著名な美術家の疎開地となった。有島生馬をはじめ、独立展の加藤陽、日本画家・奥村土牛など、その存在は桜井が画家を志す一端となる。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、67年に独立美術協会会員推挙。79年には十果会の結成に参加した。
75年からの1年間はスペインを中心に渡欧。スルバラン、ゴヤ、ベラスケスなどの影響から、同地で取材した廃村、廃墟の風景が重要な主題となった。そして、自画像、裸婦、静物にめだま焼きのモチーフが、黒を基調に現在まで描き続けられてきた。
今展の中心となる「廃墟」や「めだま焼き」は、長い時間をかけて醸成されてきた。モチーフを深めることは、作品の充実感を増すと桜井は話す。白と黒の重厚な画面に、生への希望や寂寥感がただよう。そこには、対象を凝視し、内省をくり返す画家の精神性を見てとれるだろう。
スペイン時代やニューヨークで描いた素描作品も特別に展示される。油彩約22点、素描約10点の展覧となる。
【会期】 2013年9月18日(水)~24日(火)
【会場】 髙島屋日本橋店6階美術画廊(東京都中央区日本橋2―4―1)
☎03―3211―4111
【休廊】 会期中無休 【料金】 無料
【巡回】 2013年10月2日(水)~8日(火)髙島屋京都店6階美術画廊、10月23日(水)~29日(火)髙島屋大阪店6階美術画廊
【関連リンク】 髙島屋の美術
「新美術新聞」2013年9月11日号(第1322号)1面より