初期の傑作や素描を出品
川瀬佑介(国立西洋美術館研究員)
日本におけるイタリア年にあたる2013年、国立西洋美術館は春のラファエロ展に続き、「システィーナ礼拝堂500年祭記念 ミケランジェロ展―天才の軌跡」を開催します。
ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)は、ルネサンスの頂点を極めた、西洋美術における最も偉大な芸術家の1人です。本展覧会は、生前より「神のごとき」と称され、現在に至るまで深く崇敬を集めるこの芸術家の創造の軌跡とその波紋を、彼の子孫のコレクションを引き継ぐカーサ・ブオナローティ(フィレンツェ)の所蔵品60点によって紹介するものです。ミケランジェロの作品・資料に関しては世界一の質と量を誇る同館の全面的な協力を得たことで、フレスコ画や巨大な石彫といった持ち運び不可能な作品によって主に知られるこの芸術家の個展を、日本で開催することが可能となりました。
ミケランジェロはフィレンツェでメディチ家の庇護を得ながら研鑽を積み、若くして彫刻家として活躍を始めました。本展覧会の「目玉」というべき作品が、その初期時代を代表する傑作《階段の聖母》です。15歳前後で制作したとされるこの大理石浮き彫りは、ルネサンス彫刻の創始者とされるドナテッロの得意としたスティアッチャート(極薄肉浮彫)と呼ばれる技法を取り入れたものですが、マリアの全身を極めて立体的に彫出し、力強い存在感を与えている点に、早くもミケランジェロの彫刻の特質がはっきりと現れています。本作はカーサ・ブオナローティにて門外不出とされてきたもので、今回のように長期貸し出し展示されるのは本展が史上初の機会となります。
本展では、20点を超すミケランジェロの貴重な素描が一堂に会する点も見逃せません。彼は、ヴァチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂の天井と祭壇壁にフレスコ画を描く際、膨大な量の準備素描を残しました。巨大な壁画をこの芸術家はいかにして創造したのか、本展ではミケランジェロの創作の知られざるプロセスを垣間見せる興味深い素描群が展示されます。また同時に、《クレオパトラ》のような完成作としての素描作品も出品され、ミケランジェロの素描の多彩さをご覧いただけるでしょう。そのほか、これまであまり知られていない彼の手紙や自筆手稿類なども紹介し、この偉大な芸術家の制作における苦悩や人間的側面も併せてお楽しみいただきます。
【会期】 2013年9月6日(金)~11月17日(日)
【会場】 国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)☎03-5777-8600
【開館時間】
9時30分~17時30分(毎週金曜日:9時30分~20時)※入館は閉館の30分前まで
※上野公園での明かりと稔りのフェスティバル「創エネ・あかりパーク(R)2013」 開催にあわせ、11月2日(土)及び11月3日(日)は20時まで開館(入館は閉館の30分前まで)。
【休館】 月曜、ただし祝日のとき翌日
【料金】 一般1400円 大学生1200円 高校生700円
【関連リンク】 国立西洋美術館
関連イベント
記念講演会「ミケランジェロと建築」
【日時】 10月5日(土) 14時~15時30分
【講師】 金山弘昌(慶應義塾大学准教授)
【会場】 国立西洋美術館講堂(地下2階)
記念講演会「神のごとき人への行路」
【日時】11月2日(土) 14時~15時30分
【講師】 森雅彦(宮城学院女子大学教授)
【会場】 国立西洋美術館講堂(地下2階)
※各回ともに先着140名(聴講無料、ただし聴講券と本展の観覧券が必要。)
※当日12時より、館内インフォメーションにて、本展の観覧券をお持ちの方一人につき一枚聴講券を配布。
※開場は開演30分前(自由席)。
「新美術新聞」2013年9月1日号(第1321号)1・2面より