鉛筆画によるモノクロームの世界で、最後の瞽女(ごぜ)といわれた小林ハル、谷崎潤一郎『痴人の愛』のモデルだった和嶋せい、元ハンセン病患者の詩人・桜井哲夫など、不条理の中に生きる人間の孤独や闇を描き続ける画家・木下晋(1947年富山県生まれ、金沢美術工芸大学大学院専任教授)。
このたび、木下が幼い頃に体験した放浪癖のある母との旅を描いた自身2冊目の絵本『はじめての旅』(福音館書店刊)が出版された。約60年前、富山から奈良まで母とともに歩いて旅した記憶を、独自の細密な鉛筆画で丹念に描き、文章も木下が書いている。人生の厳しい現実を突きつけるような物語だが、母と子の確かなつながりが、心にしみる。その出版記念展として今展では、鉛筆画による絵本原画に加え、本書の見返し絵を担当した染色画家・松居身紀子の作品など約40点を展示。モノクロームの細緻な世界がたたえる親子のあたたかな情愛を感じさせる展覧だ。
【会期】 9月27日(金)~10月27日(日)
【会場】 ギャラリーTOM (東京都渋谷区松涛2-11-1)☎03-3467-8102
【休館】月曜
【開館時間】 10:00~18:30
【料金】一般600円 小中学生200円 視覚障害者及び付添各300円
【関連リンク】 ギャラリーTOM
「新美術新聞」2013年10月21日号(第1326号) 4面より