生彩を放つ女性や子ども、動感ゆたかな造形性。いずれの作品も人間の生をおおらかに肯定し、作品の内奥から湧きあがる精神性をこそ作品化しようと挑んできたのが、彫刻家・蛭田二郎(1933年茨城県生まれ、日本藝術院会員、日展顧問、日本彫刻会常務理事)である。傘寿を迎える今年、その軌跡の一端を紹介する展覧会が、日本橋三越本店で開催される。
茨城大学を卒業後、日展、日彫展で早くからその実力を見出されてきた。66・67年に日展特選、70年には日展会員。2002年に第58回日本藝術院賞を受賞し、05年には日本藝術院会員となった。自身の制作と同じく、後進育成にも力をつくし、岡山大学、倉敷芸術科学大学で長年にわたって教鞭をとってきた。
今展では、「長い髪の女」シリーズや「告知」、子どもがモチーフの「頭に鳥」など、蛭田の魅力を十全に伝える作品がならぶ。女性像では、音楽の旋律も思わす流麗な魅力にひきつけられ、子どもの像ならば、作者の深い慈愛をともなった眼差しを感じることができるだろう。
今展を堪能したあとには、第45回日展(11月1日~12月8日・国立新美術館)にて、蛭田の最新作に向きあいたい。80年の生涯を通した歩みからしか築きえない、美の形象をより深く感じられるに違いない。約30点の展覧となる。
【会期】 2013年10月23日(水)~29日(火)
【会場】 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊(東京都中央区日本橋室町1―4―1)☎03―3241―3311
【休廊】 会期中無休 【料金】 無料
【関連リンク】 三越の美術
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【日時】 2013年10月26日(土) 14:00~
「新美術新聞」2013年10月21日号(第1326号)1面より