中国・唐の時代に生まれ、日本でも奈良時代に隆盛した仏像彫刻の技法「乾漆」。彫刻家・池田カオル(1946年群馬県前橋市生まれ)は、この伝統の技に現代の気風を取り入れた、清楚で気品溢れる母子像や少女像で高い評価を受けている。
木の芯に漆と砥粉を混ぜた錆漆を入念に塗り重ね、麻布を張り、それらを繰り返して乾漆は形成していく。しかし、費やされるだろう長大な時間の積み重ねに反して、池田の造形はいくらの重みも感じさせず、軽やかに、弾むような生命感に満ち、観る者を魅了する。
85年の第20回昭和会展で林武賞を受賞。以来、発表を重ねる日動画廊では6度目の個展となる。タイトルは「―つづく道―」。池田は「私たちは過去から未来へ命、または様々なものをつないでいく。自分は何を残していきたいか。次代に何を託すのか。そのような思いから“道”と名付けた」と話す。
わが子をゆるやかに包み込む手に慈しみ深い母の愛を、無垢な子どもたちの眼差しに未来への希望を感じさせる「明日につなぐⅠ」、震災への祈りの思いを込めた「あの日、鳥になれたら」など、つややかな黒い肌に落ち着いた色彩を施した母子像や少女像の新作20余点を発表。その心豊かな情緒に満ちた作品は、気忙しい現代社会に生きる私たちに、改めて愛情のありか、いのちの尊さを思い出させてくれるはずだ。
【会期】 2013年11月19日(火)~11月30日(土)
【会場】 日動画廊(東京都中央区銀座5-3-16)☎03-3571-2553
【休館】 日曜
【営業時間】 10:00~19:00 (土曜・祝日は11:00~18:00)
【料金】 無料
【巡回】 12月5日(木)~12月30日(金) 日動画廊名古屋
【関連リンク】 日動画廊
「新美術新聞」2013年11月21日号(第1329号)1面より