【京都】 「皇室の名品―近代美術の粋」展

2013年12月13日 10:40 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

横山大観「朝陽霊峰」 昭和2(1927)年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

横山大観「朝陽霊峰」 昭和2(1927)年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

 

皇室と近代美術の関係をみる

小倉実子 (京都国立近代美術館主任研究員)

 

京都のみで開催される本展は、代々の皇室に引き継がれてきた美術品群が国に寄贈されたことを受け、平成5(1993)年に開館した宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する美術工芸品の中から、選りすぐった近代以降の作品約180点を紹介するものです。明治・大正・昭和と大切に受け継がれてきた、まさに近代日本美術の「粋(すい)」と言える作品群を、皇室のコレクションに加わった経緯をもとに6つの章に分け、時代に沿って展示し、皇室と近代美術の関係をご覧いただきます。

 

第1章では、昭和20(1945)年に焼失してしまった先代の皇居・明治宮殿に焦点を当て、モノクロ写真や造営時の資料を基として宮殿の中でもとりわけ華やかであった「千種の間」を部分的に再現した部屋を作り、12代沈寿官《菊貼付香炉》等実際に宮殿に調度品として飾られていた作品を展示しています。並河靖之《七宝四季花鳥図花瓶》等帝室技芸員による超絶技巧を駆使した工芸作品を中心に紹介する第2章。川合玉堂《雨後》等明治40年に開設された官展で御買上になった作品を紹介する第3章。前田青邨《唐獅子》等ご成婚や即位といった御慶事に対するお祝いとして各方面から献上された作品を紹介する第4章。横山大観《朝陽霊峰》等在野の美術研究団体でありながら現在に至るまで献上を続けている日本美術院とその中心人物であった大観の作品を紹介する第5章。各章に展示された作品も、宮殿に飾られることを想定して制作されたものや、買上後に飾られることとなったものです。

 

和風建築でありながら家具や装飾には西洋的な要素が多く取り込まれ、和風イメージと洋風イメージが見事なハーモニーを作り出していたという明治宮殿の雰囲気を再現した第一章の部屋の様子を頭に置きつつ続く章を見ていただければ、作品単独で見る時とまた違った印象を持っていただけることでしょう。

 

並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」 明治32(1899)年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

並河靖之「七宝四季花鳥図花瓶」 明治32(1899)年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

最後の第6章では、御即位の折に開かれる宴の1つである「大饗の儀」を例として、美術品が実際の儀式にどのように使われているのかを紹介するとともに、天皇を中心とする近代日本の国家体制の確立に寄与した御肖像(いずれも御物)を紹介いたします。御肖像は一般に公開されることのなかった作品が多く含まれており、明治初期洋画の今後の研究の進展にも大きく役立つものと期待されます。

 

天皇陛下が傘寿を迎えられるこの佳き年に、開館20周年を迎えた宮内庁三の丸尚蔵館と開館50周年を迎えた京都国立近代美術館が、各館の記念事業の一つとして開催する本展は、皇室が護り育んでこられた近代日本美術の粋を体系的に広くご観覧いただけるまたとない機会となるでしょう。日本近代美術史に燦然と輝く至高の作品群が初めて一堂に展覧される「皇室の名品-近代美術の粋」展をどうぞお見逃しなく。

 

 ※なお、本展は前後期で大幅な展示替えをいたします(後期は12月11日(水)からで、本文中に出てくる作品は全て後期展示でご覧いただけるものです)。

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【会期】 前期=11月9日(土)~12月8日(日)、後期=12月11日(水)~2014年1月13日(月・祝)

【会場】 京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)☎075-761-9900

【開館】 9時30分~17時(入館は閉館30分前まで)

【休館】 月曜(ただし12月23日、1月13日は開館)、12月10日・24日、30日~14年1月2日

【料金】 一般1300円 大学生900円 高校生400円

 

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「皇室と明治の美術」

【日時】 12月14日(土) 14時~15時30分

【会場】 みやこめっせ 京都市勧業館 地下1階大会議室(京都市左京区岡崎成勝寺町9-1)

【定員】 100名 (聴講無料、当日13時から会場受付にて整理券を配布)

【関連リンク】 京都国立近代美術館

「新美術新聞」2013年12月11・21日号(1331号)1面より

 


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