山の頂であり、リーダーたちの集いを指す「サミット」との冠から、現代洋画壇を代表する11作家が集う「現代洋画サミット11展」。2回目となる今年は年長の6作家に焦点を当て、長年に渡り各作家を見てきた本紙発行人の言葉より紹介する。鑑賞のひとつの手引きにして欲しい。
古典的なモチーフである「滝」を、真正面から正攻法で描いたのが奥谷博。結氷した滝は、一見、時間が止まったようにも思わすが、滝の白と両側の岩肌のコントラストなどは、過去から現在へ流れる豊かな時間も思わすだろう。卓抜な描写力を背景とした緊張感のある画面、意欲的な取り組みである。
なにげない情景を、絵画でしか表わせない堅牢な構図で表現する島田章三。夜祭や子ども時代も思い出させる、ほのぼのとした一場面は、本来ならば絵画として完成することは難しく、それを洒脱な色彩と構図から自らの世界としてしまう凄みがある。微妙な色合いの変化と細かなアクセント。因みに青や白の配置、造形だけに着目してみれば、作品の奥深さをあらためて知ることになるだろう。
大沼映夫は上から下へ白を一刷毛置いたような連続である。本年の国展でも同じスタイルの新作を披露しているが、反復のようですべては微妙に異なり、白の中の無限の諧調を思わす。まるで祈りを重ねるような営為。見る者の心持ち次第で、いかようにも応えてくれる奥深さを秘める。
まばゆいほどの光をたたえ、緑が美しい山本貞は、草原で本を手にする女性像を描いた。初期のアメリカ風景から引き続く人間への知的な関心、そして自然をおおらかに描く近年の魅力を兼ねそなえた一作である。自然の恵み、人間への洞察と愛情。そこには画家自身の生涯も塗りこめられているに違いない。
森本草介は描く対象とする女性そのものが持つ美しさを、ありのままに描き出す。脚色を抑え、より自然に、どこか禁欲的な風情もたたえつつ、美を一貫して追求していると言えるだろう。斜めの顔立ちはその全貌を想像させ、布地、床の質感、無限を思わす背景の処理が合致し、安定感がありつつ、同時に緊張感も醸しだしている。どこまでも奥行きのある、生命の美である。
時の堆積を人物や豊かな自然、遺構などから構成する山本文彦。記憶を探り、物語を紡ぐような作品作りは今作でも存分に発揮され、咲きほこる花とみずみずしい命の輝きを見せる女性、それと背後の自然などが融和する。この地上の不思議へ真剣な眼差しを向け、世界の姿を描き出している。
ほかに、緑も効果的にさらに冴えを見せる池口史子、泰然とした一隻の船に心情を託すような大津英敏、まばゆいほどの色彩から十二支を描く絹谷幸二、かすかな寂寥感も魅力の小杉小二郎、密度のある描写と企み豊かな構成にひかれる藪野健ら、11名が出品する。(本紙発行人・油井一人)
【会期】 2014年5月28日(水)~6月3日(火)
【会場】 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊(東京都中央区日本橋室町1-4-1)☎03-3241-3311
【休廊】 会期中無休 【料金】 無料
【巡回】 2014年7月9日(水)~15日(火)名古屋栄三越7階美術画廊
ギャラリートーク
【日時】 2014年5月31日(土)14:00~
【会場】 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊
【関連リンク】 日本橋三越本店
「新美術新聞」2014年5月21日号(第1344号)1面より