丹念な写生をもとに、身近に息づく花や植物を描く日本画家・松本勝(1943年東京生まれ、日本美術院特待)。古希を迎え、近年の集大成と考える個展「四季巡礼」を日本橋三越で開催する。
武蔵野美術大学を卒業、奥村土牛、塩出英雄に師事。院展・春の院展での発表を軸に、近年では箱根・芦ノ湖成川美術館での個展「花の魂を描く」(2006年)などが思い出される。
師・奥村土牛の「技術を隠して内容を出す」との言葉を信念とし、弛まぬ研鑽を積んできた。モチーフをとらえるために幾度も現場へは足を運ぶ。写生の時間帯は朝。朝露に濡れた植物のみずみずしさや、生命の崇高さを、柔らかく抑制のきいた彩色で描き出す。シンプルな構成は、他に足し引きの余地がない厳格な美しさをたたえる。
今展には院展出品作も含む約20点を出品予定。京都や福島の須賀川などで取材がなされた。
長く花を写生していると、蕾の開く微細な動きを目の当たりにすることがあると松本はいう。見つめ続けるという行為によってしか得られない喜びが、豊かな画品に結びつく。深々とした抒情、そして曰く言い難い魅力を放つ、近年の松本の成果を堪能できるだろう。
【会期】 2014年6月4日(水)~10日(火)
【会場】 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊(東京都中央区日本橋室町1-4-1)☎03―3241―3311
【休廊】 会期中無休
【料金】 無料
【関連リンク】 日本橋三越本店
「新美術新聞」2014年6月1日号(第1345号)1面より