【名古屋】 ミレー展

2014年05月27日 18:21 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

ジャン=フランソワ・ミレー「種をまく人」1850年 油彩・カンヴァス 101.6×82.6 cm Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy Adams Shaw, Jr., and Mrs. Marian Shaw Haughton 17.1485

(1)ジャン=フランソワ・ミレー「種をまく人」1850年 油彩・カンヴァス 101.6×82.6 cm Gift of Quincy Adams Shaw through Quincy Adams Shaw, Jr., and Mrs. Marian Shaw Haughton 17.1485

開館15周年記念 ボストン美術館

バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から

 

生誕200年 待望の再来日

井口智子(名古屋ボストン美術館学芸員)

 

 

ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)は、今年生誕200年を迎えた。この記念の年に、代表作《種をまく人》(図1)《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》(図2)を含む、「ボストン美術館 ミレー展 バルビゾン村とフォンテーヌブローの森から」を開催することになった。本展覧会では、ボストン美術館が所蔵する充実したミレーの作品より初期から晩期の油彩画25点と、フォンテーヌブローの森に集ったコロー、ルソー、ディアズといった画家の油彩画39点を展示する。19世紀に森に滞在した画家の活動を追いながら、ミレーの画業をあらためてたどる内容である。

 

ミレーは1814年に、フランス北西部地方ノルマンディにある小さな村で農家の息子として生まれた。絵の才能を認められパリに移り、画家の登竜門であったサロン(官展)へ応募し始め、1850-51年のサロンに出した一点が《種をまく人》である。この作品は、肖像画、歴史画、そして農民を主題とした作品でサロンに挑み、賛否を受け、試行錯誤しながら「農民画家」としての方向性を見出したミレーを代表する一枚である。手に種を握り大地に一歩を踏み出す農民の姿は、働くこと、自然と共に生きることを考えさせられ、また人間の根源的な力強さを感じさせる。日本で最もよく知られたミレーの名作、待望の再来日に、ぜひじっくりとご覧いただきたい。

 

ジャン=フランソワ・ミレー「刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」1850-53年油彩・カンヴァス 67.3×119.7 cm Bequest of Mrs. Martin Brimmer 06.2421

(2)ジャン=フランソワ・ミレー「刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」1850-53年 油彩・カンヴァス 67.3×119.7 cm Bequest of Mrs. Martin Brimmer 06.2421

 

ミレーは30代でトロワイヨン、ディアズ、ルソーといった画家と知り合い、1849年にバルビゾンに移住する。パリから南へ約60キロにある村の隣には、フォンテーヌブローの森が広がる。美しく豊かな自然が残る森は訪れた多くの画家に自然の姿をじかにスケッチできる、格好の屋外制作の場を提供した。また、世代を越えた画家が交流する場所ともなった。彼らは森の樹木や池といった自然と、森とともに暮らす人々の姿を独自の視線でとらえた。作品にはディアズ、トロワイヨン、モネらそれぞれの画家の描法、色使いが見られ、19世紀フランス絵画に展開した多彩な動きが楽しめる。

 

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「フォンテーヌブローの森」1846年 油彩・カンヴァス 90.2×128.8 cm Gift of Mrs. Samuel Dennis Warren 90.199 Photographs © 2014 Museum of Fine Arts, Boston.

(3)ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「フォンテーヌブローの森」1846年 油彩・カンヴァス 90.2×128.8 cm Gift of Mrs. Samuel Dennis Warren 90.199 Photographs © 2014 Museum of Fine Arts, Boston.

このたびは、名古屋ボストン美術館の開館15周年記念の展覧会として、画家の生誕200年に「ボストンのミレー再来日」を叶えられたことは大変な喜びである。なお、本展覧会は当館に先立って高知県立美術館で開催され、当館の後は、三菱一号館美術館での開催となる。

 

【会期】 2014年4月19日(土)~8月31日(日)

【会場】 名古屋ボストン美術館(愛知県名古屋市中区金山町1-1-1)☎052-684-0101

【休館】 月曜、祝日のとき翌日

【開館時間】 10:00~19:00(土・日・祝休日は17:00まで、入館は閉館30分前まで)

【料金】 一般1300円 高大生900円 中学生以下無料

【巡回】 2014年10月17日(金)~2015年1月12日(月・祝) 三菱一号館美術館

 

【関連リンク】 名古屋ボストン美術館

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「新美術新聞」2014年4月11日号(第1341号)1面より

 


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