東京・港区のNANATASU GALLERY で彫刻家・板垣真美の個展が始まった。板垣は、東京藝術大学彫刻科を卒業後、個展やグループ展、国内外のアートフェアなどで発表を重ねてきた。その作品は、桐の粉末に糊を混ぜて作る粘土=桐塑を素材に、ありふれた日常に生きる人々をモチーフとしたもの。今展では、桐塑彫刻の新作6点を展示する。
会場に入ると、老齢のサラリーマンをモチーフとした3体の作品がまず目に入る。「7:39発」、「7:46発」、「7:57発」(いずれも桐塑にパステルで彩色。)と電車の発車時刻をタイトルとしたシリーズで、しわの刻まれた顔に丸まった背中、くたびれたスーツなど、その表情や仕草はどこか懐かしく、愛おしさすら感じさせる。
一般的に「桐塑」と言えば、伝統的な人形制作の技法として知られている。板垣も以前は石粉などを素材とした作品を制作しており、桐塑を素材とした作品に取組みだしたのは近年のこと。粘土で形を作り、乾燥させた後に彫刻するという制作方法なので時間がかかるが、高い強度を得ることができ、細密な造形描写に優れる。
「雨など降るもをかし」は、きっちりと真ん中で分けた黒髪に薄い眉が印象的な女性像で、寓意的な作品タイトルが笑みを誘う。原型に桐塑を塗り重ねて造形し、型を抜くという、「乾漆」と類似した技法で制作されている。
今展は、点数こそ多くないものの、作家の豊かな感性がいずれの作品にも発揮されている。ありふれた日常に生きるありふれた人々。彼らがたたえるユーモアと哀愁は、何気なく過ごす日常の大切さを思わせてくれるだろう。
岐阜県生まれ、東京藝術大学彫刻家卒業
主な展示に
2005年「芸大・茨大・筑波大卒業修了選抜展」(東海ステーションギャラリー)
2009年「世界らん展」<美術工芸部門 審査員特別賞>
2010年「Fragments」(ギャラリーアートポイント)
2011年「掌展 vol.8」(ユニグラバス銀座館)、「アート台北」(台湾/~12年)
2013年「個展」(ギャラリーゆうき)、「掌展 vol.10」(ギャラリーUG)、「TDW ART FAIR 2013」<後期グランプリ受賞>
2014年「グループ展」(HELLION GALLERY、Oregon、USA)、「Laissez-faire gallery UG15周年記念展」(上野の森美術館ギャラリー)
その他、グループ展など多数展示参加。
【会期】 2014年9月6日(土)~9月21日(日)
【会場】 NANATASU GALLERY(東京都港区西麻布2-12-4 小倉ビル3F) ※アクセス
☎03-6419-7229
【営業時間】 12:00~19:00
【休廊】 9月16日(火)
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