【岡山】小野絵麻・二三 人間・幻想・自然

2014年09月26日 09:30 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

ふたりの幻想の画家

 

(左)小野絵麻《裏道がお好き》1977年 キャンバス、油彩+アクリル絵具 個人蔵 (右)小野二三《誕生の詩》1974年 ボード、油彩 個人蔵 

(左)小野絵麻《裏道がお好き》1977年 キャンバス、油彩+アクリル絵具 個人蔵
(右)小野二三《誕生の詩》1974年 ボード、油彩 個人蔵

 

戦後の岡山を中心に独自の絵画表現を探求し、同時に多くの後進を育てた2人の画家、小野絵麻と小野二三。初の作品集である『小野絵麻・二三 人間・幻想・自然』(美術出版社、2014年)の刊行を機に企画された特別展が岡山県立美術館で開催される。

 

小野絵麻(おのえま、本名:春治、1917~97)は、岡山県上房郡高梁町(現・高梁市)に生まれ、 岡山を中心に絵画制作を行ない、美術教育にその生涯を捧げた。東京高等師範学校(現・筑波大学)図画専修科に入学して学校教諭に就いたが、戦時中にシュルレアリスム文学などを知ってその影響を深く受け、他に類をみない独自の非現実的な作風や特異なマチエールを生み出すに至った。また、戦後は岡山県立高梁高等学校や操山高等学校などの教諭として美術教育に従事し、その門下から原研哉や高原洋一など多くのアーティストを輩出したことでも知られている。(原研哉は今回の作品集のデザインも手掛けている)

 

(左)小野絵麻《夜生きる鳥》1962年 板、油彩 個人蔵
(右)小野絵麻《不安な音色が聞こえる(米・ソ競演図)》1981年 キャンバス、油彩+アクリル絵具 岡山県立美術館蔵

 

一方、その妻である小野二三(おのふみ、1915~2008)は大阪市に生まれ、幼い頃から美術に親しんだ。奈良女子師範学校(現・奈良教育大学)に公費生として入学、のちに学校教諭となる。1942年に奈良中学へ配属された小野春治(のちの絵麻)が、二三の弟・仁岸良次(にぎしよしつぐ、1919~44)と交流があったことから、二人は知り合う。そののち空襲を避けて岡山県に二人ともに疎開し、その地で二三は絵画教室を始め、多くの子どもに美術への興味を育むことに尽力した。

 

小野二三《霊鳥乱舞》1978年 キャンバス、油彩 個人蔵

 

1962年の近所からの類焼により、不運にも夫妻の初期作品の多くは失われたが、今展では戦後に制作された作品を中心にこの2人の歩んだ希有な画業を回顧する。

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小野絵麻と小野二三。ふたりの幻想の画家は僕の絵画の師であった。幼少期から青年期にかけて、ふたりのシュルレアリストによる絵画世界は自分の心を魅了してやまなかった。

 

僕は小学校に上がるとすぐに絵画教室に通うようになった。1965年。東京オリンピックが開催された翌年である。(中略)二三先生は根っからの教師であった。さっぱりした性格、ハキハキとした物言い。美に感応する明晰さとでも言うか、言いたいことを明るく快活にしゃべる素敵な女先生であった。

 

高校に入ると、絵麻先生が待ち構えていた。僕は岡山の進学校のひとつ、県立岡山操山高校に入学した。美術を目指してここに入学したのではなく、京都大学か一橋大学に進もうと淡く期待しつつ、相応の勉強もしていた。しかし美術好きはいうまでもない。その高校の美術教師が小野絵麻その人であった。(中略)絵はあくまで趣味だと思っていたが、万が一にも自分にそちら方面の才能があるのかどうか、一度絵麻先生に訊ねてみようと職員室を訪ねた。はたして、僕が多くを語る前に、「おおそうか。それなら武蔵美か多摩美か、どっちにする」と、絵麻先生は言った。迷いを吹き飛ばす一言である。これが運命の分かれ目になった。

 

大学に入学した頃を振り返ると隔世の感がある。幼少期から青年期に薫陶を受けた師としての夫妻ではありながら、こうしてふたりの芸術家の活動を冷静に振り返るとき、画業においてと同様、教育的成果においても瞠目すべき実績をもたらせていることがわかる。

(『小野絵麻・二三 人間・幻想・自然』(美術出版社、2014年)収録 原研哉「ふたりの芸術と啓発力」より抜粋)

 

小野絵麻(左)・二三(右) 岡山市門田の自宅にて 1972年頃

 

【会期】9月26日(金)~11月3日(月・祝)

【会場】岡山県立美術館 地下展示室(岡山市北区天神町8-48) TEL 086-225-4800

【休館】月曜、10月14日(火)、ただし10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館

【開館】9:00~17:00(9月26日(金)、10月24日(金)は19:00まで、入館は閉館30分前まで)

【料金】一般350円 大学生250円 65歳以上170円 高校生以下無料

【関連リンク】岡山県立美術館

 

■ギャラリートーク「父・小野絵麻と母・小野二三について」

【日時】9月26日(金)18:00~

【講師】小野絵里(画家)

【会場】地下展示室 ※要観覧券

 

■ギャラリートーク「ふたりの芸術と啓発力」

【日時】10月18日(土)14:00~

【講師】原研哉(グラフィックデザイナー、武蔵野美術大学教授)

【会場】地下展示室 ※要観覧券

 


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