【東京国立近代美術館】奈良原一高 王国

2014年11月13日 18:00 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

東京では56年ぶり、「王国」の全体像を紹介

 

奈良原一高《「王国」より沈黙の園》 ©Narahara Ikko Archives

 

戦後に登場した世代を代表する写真家の一人として知られる奈良原一高(1931年福岡県生まれ)。このたび奈良原が1958年に発表した「王国」シリーズが56年ぶりに東京で展覧される。

 

「王国」は、北海道の修道院と、和歌山の女性刑務所というそれぞれ外部と隔絶された空間に生きる人間存在を見つめた作品。ほぼ無名の新人の個展としては例外的な反響を呼び、鮮やかなデビューとなった1956年の個展「人間の土地」に続いて、極限状況を生きる人間というテーマを深化させた同作は、日本写真批評家協会賞新人賞を受賞するなど、奈良原の評価を確立するものだった。今展は2010年度に株式会社ニコンより寄贈されたプリント全87点により、この初期の代表作「王国」を紹介するものとなる。

 

(左)奈良原一高《「王国」より沈黙の園》 ©Narahara Ikko Archives
(右)奈良原一高《「王国」より壁の中》 ©Narahara Ikko Archives

 

タイトルの「王国」は、アルベール・カミュの中篇小説集『追放と王国』(1957)にちなみ、奈良原が名づけたもの。1958年に個展(富士フォトサロン、東京および大阪)と雑誌グラビアページ(『中央公論』1958年9月号)において、女性刑務所に取材した「王国(その1)壁の中」と、修道院を舞台とする「王国(その2)沈黙の園」の2部構成で発表された。

 

その後、1971年に中央公論社から「映像の現代1」として刊行された写真集『王国』(英題はMan and his Land)では、当初の第1部と第2部を入れ替え、さらに1956年発表の「人間の土地」シリーズより、長崎沖の炭鉱の島、通称“軍艦島” を取材したシリーズを第三部とする構成へと変更される。そして1978年、朝日ソノラマからソノラマ写真選書第9巻として刊行された写真集『王国 ―沈黙の園・壁の中―』では、再び「沈黙の園」60点、「壁の中」30点の全90点からなる2部構成へと編み直された。この1978年版では、Domainsという英題が与えられた。今回展示する87点は、1978年版写真集での構成をほぼ踏襲するものとなる。

 

 

奈良原一高《「王国」より沈黙の園》 ©Narahara Ikko Archives

 

(左)奈良原一高《「王国」より沈黙の園》 ©Narahara Ikko Archives
(右)奈良原一高《「王国」より壁の中》 ©Narahara Ikko Archives

 

奈良原一高《「王国」より壁の中》 ©Narahara Ikko Archives

 

 

奈良原一高(ならはらいっこう)

1931年福岡県生まれ。中央大学法学部卒業後、早稲田大学大学院で美術史を専攻。在学中の1956年に開いた個展「人間の土地」(松島ギャラリー、東京)で注目される。58年個展「王国」(富士フォトサロン、東京・大阪)により日本写真批評家協会賞新人賞を受賞。59年、東松照明、細江英公らとセルフ・エージェンシーVIVOを結成(61年解散)。62年から65年まで滞欧。帰国後出版した写真集『ヨーロッパ・静止した時間』(鹿島研究所出版、1967)により日本写真批評家協会賞作家賞(1967)、芸術選奨文部大臣賞(1968)受賞。70年から74年まで滞米、帰国後滞米中の作品を写真集『消滅した時間』(朝日新聞社、1975)としてまとめる。86年、写真集『ヴェネツィアの夜』(岩波書店、1985) により日本写真協会賞年度賞。96年紫綬褒章受章。2005年日本写真協会賞功労賞受賞。

 

【会期】2014年11月18日(火)~2015年3月1日(日)

【会場】東京国立近代美術館 ギャラリー4(東京都千代田区北の丸公園3-1) TEL 03-5777-8600

【休館】月曜、祝日のとき翌日、年末年始(12月28日(日)~2015年1月1日(木・祝))

【開館】10:00~17:00(金曜は20:00まで、入館はそれぞれ閉館30分前まで)

【料金】一般430円 大学生130円 高校生以下および18歳未満、65歳以上無料

※2月1日(日)、3月1日(日)は無料観覧日

【関連リンク】東京国立近代美術館

【関連記事】高松次郎ミステリーズ(12月2日より東京国立近代美術館で同時開催)

 

 


関連記事

その他の記事