多様な作品の全貌に迫る
東京造形大学を卒業後、2006年にラファエル・コラン(1850~1916)をオマージュした作品《フロレアル》を含む「銀色の僕」で第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展準大賞を受賞し、一躍脚光を浴びた梅津庸一(1982年山形県生まれ)。今回、自身の10年に及ぶアーティスト活動を回顧する展覧会を鳥取で開催する。
梅津は2014年には5年ぶりとなる個展で黒田清輝(1866~1924)の作品を引用した《智・感・情・A》を発表。西洋から移入された日本近代洋画の成立を問いなおすこれらの作品ではモデルを梅津自身の裸体に置き換え、粒子のような繊細なタッチの重なりで描くことで、美術史と個人史が複雑に錯綜し、画題もさることながら、そのあわいが大きな見所となり話題を呼んだ。
今展では梅津の来歴を、新作を含むドキュメントを多用した展示によって俯瞰。戦争で亡くなった親族の古い写真を元にしたメタルポイントのシリーズ、ヴィジュアル系バンドをオマージュした油彩、マンガのような描画のドローイング、家具など日用品を使ったインスタレーション、自身が裸体で出演する映像など、代表作以外にも多岐にわたる作品を制作している梅津。これら一連の作品が代表作とともにどのように乱反射しているのか、また、震災後のタイミングで企画された「絵画説明会」(2011)、美術予備校と現代美術の連続性を可視化した企画「優等生」(2013)、そして現在熊本現代美術館ギャラリーで開催中の美術教育を主題にした「パープルーム大学Ⅱ」(2014~)など、積極的に他のアーティストと協働し、時として展覧会を企画する背景にはどのような問題意識が胎動しているのか。
多様な展開ゆえに、ともすれば見えにくい梅津の活動の全貌を概観する。
初めて訪れる鳥取という場で展覧会を開催できることをとても嬉しく思います。
Retrospective(回顧)とはいえ、ただ振り返るというのはでなく鳥取という未知の土地だからこそ、わたしという射程範囲を越えたところまでそれが及ぶ可能性があるように思います。
どのような展覧会になるのか自分にもまだ見当がつきませんが、いつか振り返った時に転換点だったと呼べるものになるように、美しい関係性を築けるように、そう強く思います。 ー 梅津庸一
【会期】2015年2月5日(木)~9日(月)
【会場】SAKAE401(鳥取県鳥取市栄町401 本通ビル3階) TEL0857-30-4385
【休館】無休
【開館】9:30~18:00
【料金】無料
【関連リンク】SAKAE401
■アートフォーラム
トーク:梅津庸一、司会:筒井宏樹
【日時】2015 年2 月6 日(金)19:00~
【会場】展示室内
予約不要