【東京】佐藤泰生 和光大学退職記念展「泰生の半生を再生。」

2015年01月26日 11:05 カテゴリ:新制作協会

 

天才的ひらめき、貫いた孤高

 

 

佐藤泰生が和光大学退職記念展を開く。戦争の終った1945年、中国、東北地方の大連に生まれた。戦後生まれが『70歳』の定年を迎えた。戦後の画壇に、ひとくぎりをつけた。それぞれの画家にそれぞれの感慨があることだろう。佐藤自身の言葉によっても「小学校のノートを手塚治虫、山川惣治、ディズニーの漫画で真っ黒にした」という。戦後派画家の類型といえよう。東京藝大では卒業時、大橋賞を受賞、大学院まで進んだ。

 

小磯良平教室に学び、素描を鍛え上げた。当時の作品は、故意にアカデミズムの技法に背を向け表現、構成主義的な作品を残している。敬服するのは当時から画家として天才的なひらめきを見せ、新制作協会出品作には、アカデミックな細密、超現実主義の技法と表現を使いこなし、独特な世界観を提示している。この絵画観は終生、変わることなく自身を貫き通している。

 

独特な構図法がある。とりわけ、登場する人物、動物、ベニスなどの風景に計算しつくされたフォルムがある。時に難解、稚拙に見られるが、色彩の配分と関わりあい、抒情詩的な特異な才能を見せ、さすがと感じさせる。西欧的ない粋、見立ての美意識を持つ。だが、ギリシャ、ローマ時代からのヘレニズムの美術や精神の伝統にこだわるわけでもなく、全く自由である。

 

 

とはいえ中国、長江文明の持つ絵画観から生まれた安土、桃山の屏風、襖絵や江戸町人が作り上げた富士山信仰に、のめり込むこともあった。六曲一双のパリ、ニューヨークなどの俯瞰図による屏風展、また北斎につながる富士を中心とした発表なども行っている。パリ、ベニス、ニューヨーク、アフリカ、北米、日本などの主題はその風景、人物、花など、多岐にわたる。

 

戦後の画壇のひとくぎりと言ったが、「佐藤泰生の仕事」は、戦後70年の中で残る数少ない作家のひとりと思う。佐藤は10回にわたる大きな個展を開いているが、その度毎に異なった美術評論家が解説や画論を加えている。それぞれの評論を読みニヤニヤしながら孤高を貫くのが、この画家であると思われてならない。

 

安井収蔵(美術評論家)

 

【会期】 2015年2月7日(土)~21日(土)

【会場】 和光大学 パレストラ4階展示スペース(東京都町田市金井町2160番地) TEL 044-988-1431

【休館】 日曜

【開館】 9:00~17:00

【料金】 無料

【関連リンク】 和光大学 芸術学科

 


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